むかし、父親を亡くし、やがて病弱だった母親も亡くして、曾祖母と二人で暮らしている吾一という男の子がいました。
ある日、男の子が漁をしていると小さなハマグリを釣り上げました。「せっかく釣ったが、助けてやるよ」といって、海へ逃がしてやりました。そして、また釣り糸をたらしていると今度も小さなハマグリがかかりました。一つ揚げておくかと、舟の上に転がしてまた釣り糸を垂らしていると、肩に手をかける者がいました。
吾一が振り向くと、いつ乗り込んだのか、船にきれいな娘が立っていました。「オラははまぐり姫コじゃ、お前の家まで連れて行ってくれろ」と言うので、少しの間だけ姫を吾一の家に置いてやることにしました。
その日の晩、はまぐり姫コはトンカラリトンカラリと機を織り始めました。幾日か経った頃、姫は反物を完成させて「私は観音様の使いです、そろそろ国に帰ります」と言って、観音様の姿を写した綺麗な反物を置いて海に帰っていきました。
そして吾一は、はまぐり姫から言われた通り、反物を売って商売を始めました。親孝行な吾一が商売を始めたと言うので、隣近所から人々が押し掛け、商売は繁盛しました。お婆さんも吾一も、元気に暮らしたという事です。
(投稿者: araya 投稿日時 2011-12-15 17:03)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 東北農山漁村文化協会(未来社刊)より |
出典詳細 | みちのくの民話(日本の民話 別1巻),東北農山漁村文化協会,未来社,1956年06月10日,原題「はまぐりひめコ」,話者「青森県弘前市第二大成小学校教諭の斎藤正」 |
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