若い時の弥助(やすけ)は、木こりでした。
ある時、見知らぬ女が弥助の所へ「明日、谷にある柳を切らないで下さい」と、頼みにやってきました。仲間の通夜に参列してすっかり酔っ払っていた弥助は、頭を下げる女に背を向けて、そのまま眠ってしまいました。
翌朝、予定していた通りに弥助と十五人の木こり仲間が北又谷(きたまただに)に入りました。そこには数百年もたったであろう実に見事な柳の木があり、弥助が止めるのも聞かず仲間の木こり達は大喜びで柳を切り倒しました。
その夜、小屋で弥助たちがすっかり寝入っているところへ、昨夜の女がやって来ました。女は、寝ている15人の木こりの舌を、一人ずつ口で吸い取り殺していきました。最後に「あなたに頼めばこんな事にならずに済むと思っていたのに…」と弥助に迫ってきましたが、山刀で切りつけ小屋から逃げ出しました。
それから50年たち、弥助はすっかりお爺さんになりました。この話を、いろり端に座ってお茶を飲みながら、目の前に座っている若い女に聞かせていました。昔の事を思い出しながら、ぽつりぽつりと話しました。
しばらくたった頃、弥助爺さんは恍惚とした表情のまま、舌を抜かれて死んでいました。この事件があった谷を16人谷と言うそうです。
(紅子 2011-12-23 3:32)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 富山の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 富山の伝説(日本の伝説24),辺見じゅん,角川書店,1977年11年10日,原題「十六人谷」 |
場所について | 十六人谷(地図は適当) |
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