昔、兵庫県の又部新田村(またべにったむら)に、弁天池とよばれる大きな池がありました。池のほとりには弁天様がまつってあって、池の水は田畑を潤すありがたい水でした。
この村に、彦衛門という百姓が嫁さんと二人で暮らしていました。彦衛門は弁天池の守り番の仕事もしていたので、毎日のように弁天様をお参りしていました。するとある日、弁天様が「彦衛門の家へ遊びに行きたいが、天界の身だから家の人に見られたら困るので、嫁は他所へやってもらえんか?」と言われました。
べっぴんさんの弁天様の頼みを断れるわけがなく、彦衛門はどうにか理由をつけて嫁を帰省させる事にしました。嫁が出発すると、さっそく弁天さんが彦衛門の家に現れ二人で楽しくお話していましたが、やがて怪しいと感づいた嫁が家に戻ってきました。
二人の様子を見た嫁は、カンカンに怒って彦衛門につめ寄りました。大げんかが始まる中、弁天さんは「うちは天界の身。下界の者に見られた以上、もうここにはおれん」と言って、雲に乗ってすうっと飛んで行ってしまいました。
弁天様がいなくなったこの村では、彦衛門がすがってちぎれた弁天様の片袖をご神体としておまつりしました。一方、淡路へ行った弁天様は、一か所にじっと留まらない「まわり弁天」となって、今も各地を回っているそうです。
(紅子 2012-2-3 0:26)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 兵庫県 |
場所について | 平荘湖の弁天神社 |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第060巻(発刊日:1986年9月) |
講談社の300より | 書籍によると「兵庫県のお話」 |
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