昔、信州の須坂の城下に、日滝という小さな村がありました。働き者だが貧しいこの村の人々は、春と秋のお祭りを何よりも楽しみにしていました。このお祭りに欠かせないのは、笛の名人おたき婆さんの笛の音でした。
ところがこの村に二年も日照りが続き、米や野菜がとれなかったので、城の殿様から贅沢禁止令が出されました。凶作続きの上に、たった一つの楽しみを取り上げられて、村人たちはすっかり気落ちしてしまいました。
ある雨の日、おたき婆さんの家に、狩りの途中の二人のお侍さんが雨宿りに立ち寄りました。おたき婆さんがお茶など準備している間に、お侍さんがずぶ濡れのまま大切な米俵に腰かけていました。それをみたおたき婆さんは、怒って侍を雨の中に追い出してしまいました。
それから二、三日して、おたき婆さんはお城から呼び出されました。実はあの時のお侍さんはお城の殿様で、自分の無礼を詫びて褒美をとらせるという事でした。その際、おたき婆さんは「どうかお祭りをさせて下さい」とお願いしました。
祭り禁止のおふれはその日のうちに取り下げられ、日滝の森に久しぶりに祭りののぼりが立ち、村人たちは楽しげに踊りました。おたき婆さんの笛の音は「来年こそは豊作を」と祈りを込めて、辺りの山々に響き渡りました。
(紅子 2012-2-3 22:43)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 長野県 |
DVD情報 | DVD-BOX第7集(DVD第34巻) |
場所について | 日滝(地図は適当) |
講談社の300より | 書籍によると「長野県のお話」 |
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