昔、越中の平村に、母親思いの仲の良い姉妹が病気の母親と三人で暮らしておりました。
二人の父親は早くに亡くなっていて、白山権現様を信仰する信心深い母親は一人で二人で娘を育てていましたが、無理がたたったのか病気になってしまったのです。姉妹は、母親の代わりに一生懸命に働き、幼いながらも一人前の働きをするようになっていました。
しかし、母親の病は春になってもよくならず、幼い姉妹はいつも「南無白山権現」と唱えながら病気が治ることを祈っていました。そんな親孝行の二人に白山権現様からの夢のお告げがあり、病気を癒す温泉を教えてもらいました。二人は、雨の日も風の日も毎日母親を温泉に担いで連れていってあげました。
そうして、秋になるころに母親の容態はよくなり、二人は秋の収穫をする際にふと思い立って、白山権現様にお礼参りをしようと出かけました。ところが、白山権現様は女人禁制の厳しい掟がありました。そんなこととは知らない姉妹は白山権現様にお礼をして、帰り道に吹雪にあい遭難してしまいました。
もし、思い立ってのお礼参りでなければ、母親に一言声をかけていれば当然教えてもらえたはずの女人禁制でした。禁を破ったことにお山が怒ったのか、あるいは季節より早い吹雪がきたのか…姉妹はついに帰ってくることはありませんでした。
一人取り残された母親は、春になって姉妹の事を思いながらとぼとぼと畑に向かっているとき、山肌に姉妹の姿を見つけました。姉妹の早すぎた死を悼んで山の雪も二人の姿を消すことができなかったのでしょう。その二人の人形(ひとがた)の話は村に伝わって、いつの頃からかこの山を「人形山(にんぎょうざん)」と呼ぶようになったということです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-12-25 15:37 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 富山県 |
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場所について | 人形山 |
本の情報 | 講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第40巻(絵本発刊日:1985年10月15日) |
絵本の解説 | 白山権現とは、富山県東砺波郡平村にある白山宮のことです。北国では、冬のおとずれとともに、あたり一面白一色、雪の世界に閉ざされてしまいます。人々はいろりのまわりでわらじを編んだり、縄をなったりしながら、じっと春を待っているのです。それだけに雪どけは大きな喜びなのでしょう。みんな、山肌がすこしずつ見えてくるのをうきうきとした気分でながめているのです。その残り雪が少なくなってくると、ふとなにかの形に見えます。この話も、そんなところから生まれたのかもしれません。美しくも悲しい、親思いの姉妹の話は、まっ白な雪にふさわしい物語です。(富山地方の昔ばなし)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「富山県のお話」 |
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