昔、ある村にお春婆さんと孫で七歳になるお花という女の子が住んでいました。
お春婆さんは、よその家の野良仕事を手伝ったり針仕事をして暮らしを立てていました。畑仕事をしている間は、お花は村の男の子を相手に棒っきれ遊び(チャンバラ)をしていました。お花が三歳の時に両親がなくなり、お春婆さんはとても悲しみましたが、お花が元気にすくすく育っていくのが楽しみでした。
やがて秋になり、村は稲刈りで大忙しとなりお春婆さんもあちこちの家の手伝いで大忙しでした。お花はあいかわらず棒っきれ遊びに夢中でしたが、ある時「もう棒っきれ遊びはやめて、ばっちゃの手伝いをするだ」と言いました。お春婆さんは、お花のこんな言葉に心から嬉しく思って、涙がぽろりと落ちました。
ところがその冬、村で百日咳がはやり、村の子供たちはみんなひどいセキをして苦しみました。お花もこの百日咳にかかり、苦しみながらあっけなく死んでしまいました。お春婆さんは、突然の悲しみに何日も何日も仏壇の前に座ったまま動こうとしませんでした。
お春婆さんは、幼くして死んだお花が極楽への道も分からずあの世で両親にも会えず迷っているいるかもしれないと思い、石のお地蔵さんを彫りはじめました。来る日も来る日も彫り続け、春になった頃にようやくお花にそっくりの小さなお地蔵様が完成しました。
この小さなお地蔵様は、「お花地蔵」と呼ばれるようになり、お花の好きだった炒り米をお供えすれば、子供の百日咳が良くなるといわれるようになりました。
(紅子 2012-1-30 23:11)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 栃木県 |
場所について | 那須烏山市向田のお花地蔵 かご山りんご園入口近くの?藪の中(地図は適当) |
本の情報 | 講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第30巻(絵本発刊日:1985年05月15日)/講談社テレビ名作えほん第041巻(発刊日:1981年3月) |
絵本の解説 | 静かにたたずむお地蔵さんにも、それぞれいわれがあるものです。このお話の「お花じぞう」は、幼い孫を亡くしたお婆さんが自ら彫ったもので、子供を病気から守ってくれるといわれています。お花は男の子に負けない元気な女の子でしたが、ある冬、百日ぜきであっけなく死んでしまいました。一人残されたお婆さんは心を痛め、孫のために小さなお地蔵さんを彫りました。そのお地蔵さんが子供を病気から守ってくれるのは、お婆さんの温かい心が天に通じたからでしょう。作り手の純粋な心がお地蔵さんに魂を吹き込んだのです。(栃木地方のお話)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「栃木県のお話」 |
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