九州に4人の狩りの名人がいました。
山石原の次郎左衛門(じろうざえもん)は、大阿蘇の主の大イノシシを一発で仕留めた。
堀川の金右衛門(きんうえもん)は、一日で兎を百羽とった。
岡上の善兵衛(ぜんべえ)は、夜撃ちでカモを百羽とった。
谷汲川の遊太郎(ゆうたろう)は、九州一の人さらいの大鷲を一発で撃ち落とした。
これほどの名人になると、逆になかなか山へ入らなかったので、四人の妻たちは暮らしに困って内職を助け合ってこなしていた。それでも四人の評判はあちこちに知れ渡っていたので、方々からたくさんの見物人が集まってきて、いつも若者たちが周囲にたむろしていた。
さて、ある朝早くに善兵衛が山へ入り、それと時を同じくして遊太郎も山へ入った。喜んだ野次馬たちも後からついて行き、妻たちも獲物を心待ちにしていたが、二人とも手ぶらで帰ってきた。野次馬たちに理由を聞くと、「善兵衛と遊太郎が谷を挟んだ崖から向かい合って鉄砲を撃ち、二人のど真ん中でぶつかり合って弾が一つにくっついた」と、興奮しながら説明した。
またあくる日、次郎左衛門が珍しく気分が乗ってイノシシを撃ちまくっていると、弾が無くなってしまった。ふと見ると、はるか遠い山の上に金右衛門がいたので、弾を一発借りることにした。金右衛門がズドンと撃った弾を、次郎左衛門が鉄砲の筒先で受け止めた。
なんとも嘘のような名人たちは、男たちには大評判だったが女たちには受けが悪かったそうだ。
(紅子 2012-1-5 20:54)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 大分県 |
DVD情報 | DVD-BOX第6集(DVD第27巻) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第31巻よりぬき名作集-第154話(発刊日:1983年5月) |
サラ文庫の絵本より | 弓矢の名人とおなじように、鉄砲うちの名人のおはなしも数多く語りつがれてきました。これは、九州の阿蘇山のあたりにいたという四人の鉄砲名人のおはなしですが、やはりすぐれた腕まえの持ち主として知られる、愛媛のトッポ吉という猟師のおはなしには、こんなとぼけたものがあります。…ある日、トッポ吉が竹やぶのなかで鳥をねらってうったら、タマが竹にあたってカチカチはねかえり、とうとう、夜までそれがつづいていたとさ。「かもとり権兵衛」のように、鉄砲うちはヘタでも、おかしなぼうけんをする猟師もいたり、さまざまです。(かっこ枠なし) |
講談社の300より | 書籍によると「大分県のお話」 |
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