昔、里の女が鬼にさらわれ、やがて「できぼし」という男の子が生まれた。
ある日、里の爺さんが娘に会うために鬼の家に訪ねてきて、その晩は鬼の家に泊まっていくことになった。しかし、美味しそうな爺さんを食べたくて仕方がなかった鬼は、皆が寝込んでから長い舌を爺さんの方に伸ばしてはできぼしにポカリと叩かれ、を一晩中くりかえした。
翌日、鬼が出かけている間に三人はこっそりと里へ逃げ帰る事にした。できぼしは家の中のあちこちにウンコをして、自分の代わりに返事するように言いつけた。しかし、鬼がみんな逃げ出している事に気が付き追いかけてきた。
川をイカダで逃げていく三人を見つけた鬼が、川の水を全部飲みほすとイカダは止まってしまった。腹がタブタプになって走って来る鬼に向かって、できぼしが尻をペチペチと叩くと、思わず笑い出した鬼が川の水を全部吐き出した。その水の勢いに乗って、三人は無事に逃げ延びた。
しばらくたった節分の夜、鬼ができぼしを探しに爺さんの家にやって来た。家の軒に、やいかがし(焼いたイワシの頭)が刺してあるのを見た鬼は、できぼしを焼いてしまったと勘違いして、恐ろしくなって山に逃げ帰った。
一安心した爺さんができぼしの頭を撫でると、できぼしの頭の角がポロリと落ちた。それからのできぼしは人間の子供として幸せに暮らした。
(紅子 2011-11-27 1:50)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 福島県 |
備考 | 講談社の書籍には福島県と明記あり |
DVD情報 | DVD-BOX第5集(DVD第23巻) |
場所について | 福島県桧枝岐村(地図は適当) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第31巻よりぬき名作集-第155話(発刊日:1983年5月)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第50巻(絵本発刊日:1986年03月15日)/講談社テレビ名作えほん第052巻(発刊日:1983年11月) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
講談社のデラックス版絵本より | 福島県桧枝岐村(ひのえまたむら)に伝わる話で、原話は「できぼしやあい」。できぼしは、鬼と言々の間に生まれた男の子です。節分は立春の前日。新しい季節を迎えるにあたって、災厄や邪気を払うために行われるようになったのが豆まきです。この日、焼きかがしを戸口にさす風習は全国的に見られ、にんにく、ねぎ、ひる、毛髪などを添える地方もあります。焼きかがしには、焼いた臭気をかがせて邪気を退けるという意味があるのです。焼きかがしを見て、できぼしが焼かれてしまったと思った鬼が、人間はおそろしいと身震いする姿がこっけいですね。(福島地方の昔ばなし) |
講談社の300より | 書籍によると「福島県のお話」 |
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