昔、栃木県烏山(からすやま)にちかい木須川のほとりに住む長者には、一人娘がいました。女房に先立たれた長者は、残された娘を大切に育て、村でも評判の美しい娘になりました。
いつの頃からか、長者の村に近い山に山賊が住みつき、旅人が襲われたり村が焼かれたりするようになりました。そんなある日、山賊の頭(かしら)が長者の娘に一目ぼれし、嫁によこさなければ村を丸焼きにする、としつこく脅しました。娘は仕方なく、村を守るために山賊のところへ嫁に行くと決心しました。
いよいよ明日が嫁入りという時、母のかたみの人形の目があやしく光ったかと思うと、娘はそのまま気を失って倒れてしまいました。次の日の朝、迎えにやって来た山賊たちは花嫁姿の娘をかごに乗せて連れ出すと、なんとそれは花嫁衣装をつけた人形でした。
怒った山賊の頭は人形を川へ放り出し、長者の屋敷を丸焼きにしようと出発しました。山賊たちが長者の屋敷に到着すると、そこには屋敷を守るようにとぐろを巻いている巨大な竜が目を光らせていました。山賊たちは竜からさんざん炎を吐きかけられ、自分たちが丸焼けになってしまうと命からがら山に逃げ帰りました。
静かになって長者と娘がおそるおそる外を見ると、そこには母のかたみの人形がずぶぬれになって転がっていました。その後、この村の近くで山賊のうわさを聞くこともなくなりました。
(紅子 2011-11-18 1:54)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 栃木県 |
場所について | 木須川のほとり(地図は適当) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第088巻(発刊日:1987年11月) |
講談社の300より | 書籍によると「栃木県のお話」 |
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