昔、小田原の近くの寄(やどろぎ)というところにお夏という欲深な婆さんが住んでいました。それはもう、自分の物なら舌を出すのも嫌いなほどで、人の物は平気で横取りしてしまうほどの強欲ババアでした。
このあたりの土地は痩せていてどの畑の里芋も育ちが悪いのでしたが、どういうわけかお夏婆さんの里芋だけは丸々と太っていました。村人たちが、お夏婆さんに里芋(種芋)を分けてくれるようお願いしても、絶対に分けてくれませんでした。
ある日、この村にみすぼらしい旅の坊さんがやってきました。ちょうど里芋を洗っていたお夏婆さんに「もう五日も何も食べてないのでこの芋を分けてもらえませんか?」とお願いすると、婆さんは「これは石芋だから食えんのじゃ」と嘘をつきました。
家に帰った婆さんは、洗ってきたばかりの里芋を鍋で煮て、そろそろ食べようと蓋をあけてみると、なんと里芋は全部石になっていました。あわてて畑へ行ってみると、なんと婆さんの自慢の里芋はみんな石になっていました。
それからというもの、お夏婆さんの畑では何度芋を植えてもみんな石になったそうです。村人たちは、この石芋の事を「お夏石」と呼んで、欲をかかないための戒めにしたそうです。
(紅子 2012-1-16 0:16)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 神奈川県 |
DVD情報 | DVD-BOX第10集(DVD第48巻) |
場所について | 松田町寄(地図は適当) |
講談社の300より | 書籍によると「神奈川県のお話」 |
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