昔、広島の大懸山に、野鹿を狙う五助という猟師と年老いたウワバミがいて、いつも同じ獲物を取り合っていました。今日もウワバミに野鹿を横取りされ、五助は「いつか勝負しないといけなくなるから覚悟しろ!」と言いました。
するとその夜、五助の小屋にウワバミの化身という一人の男が現れました。男は「本当に強い者は、勝負の前に自分の弱点を相手に知らせるという。それを伝えに来た」と言いました。五助は酒を酌み交わしながら「猟師の弱点は、火縄の火を消される事だ」と正直に話しました。そして五助とウワバミは、七日七晩たった日を勝負の時としました。
いよいよ勝負の日、五助の前に姿を現したウワバミは、予想通り雨や風で火縄の火を消そうと攻めてきました。銃を構える暇などなく嵐の中を必死に逃げ惑う五助は、どうにか桶の中に隠しておいた火縄をとりだし、岩の斜面の裂け目に身を潜めました。
裂け目の底で息を殺して待っていると、ウワバミがずるりずるりと岩の上を滑り降りてきました。ウワバミの弱点であるアゴの部分が五助の頭上を通過した瞬間、構えていた銃でアゴを撃ち抜きました。ウワバミはずるずるとがけ下に落ち、五助もウワバミの毒に当てられたのか、何日もの間寝込んでしまいました。
やがて元気になった五助は、がけ下に白骨化したウワバミの骨を拾い集め、黒焼きにしてたくさんの薬を作りました。この薬は痛み止めとしてよく効く薬として、里の人々にも分け与えたという事です。
(紅子 2012-1-27 0:03)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 広島県 |
DVD情報 | DVD-BOX第8集(DVD第39巻) |
場所について | 大懸山 |
講談社の300より | 書籍によると「広島県のお話」 |
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