昔、ある山寺に素直で正直な小僧さんが和尚さんと二人でいました。
この頃のお坊さんは、魚を食べてはいけない事になっていましたが、この山寺の和尚さんは鮎が大好物でした。いつも小僧さんに見つからないようにこっそり鮎を食べていましたが、とうとう見つかってしまい思わず「これはおかみすり(剃刀)だ」とごまかしました。
翌日、小僧さんと一緒に馬に乗って出かけた和尚さんは、何事が起こっても黙って後ろからついてこいと命じました。小僧さんは言われた通り、川を渡るときに馬から落ちたタバコ入れを、何も言わずに見送りました。後からタバコ入れがないことに気が付いた和尚さんは、「これからは馬から落ちた物は何でも拾え」と命じました。
やがて、前を歩いていた馬の尻から、糞がポタポタと落ち始めました。これを見ていた小僧さんは、和尚さんの大切な傘で馬糞を受け止め、必死に後をついて歩いていました。振り向いた和尚さんはビックリして「すぐに川に捨ててこい」と怒鳴りつけました。
小僧さんはどうして和尚さんの言う通りにしているのに怒られるのか理由もわからず、川に行って傘を洗っていました。すると、傘の中にたくさんの鮎が入ってきて、それを見ていた和尚さんは喜びましたが、小僧さんはポイっと傘も鮎もみんな川に捨ててしまいました。
(紅子 2012-2-27 21:42)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 滋賀県大津市 |
DVD情報 | DVD-BOX第12集(DVD第57巻) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第110巻(発刊日:1980年かも)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第38巻(絵本発刊日:1985年09月15日)/講談社テレビ名作えほん第052巻(発刊日:1983年11月) |
絵本の解説 | 和尚さんと真っ正直な小僧さんのお話です。和尚さんが小僧さんを従えて出かけたときのこと。和尚さんの好物のあゆが、川にたくさんいるのを見かけた小僧さんが、大声で和尚さんに知らせます。あわてた和尚さんは、何があっても見て見ぬふりをして歩けとしかりつけました。そこで、素直な小僧さんはいわれた通りにし、ついには和尚さんの大事な傘もあゆも川に流してしまったのです。自分の命令を忠実に守っているだけに、和尚さんは腹が立っても怒るに怒れません。権威ある者に対して、相手にさからわずにぎゃふんと言わせたいという庶民の気持ちが、“融通のきかない正直さ”の中によく出ています。(滋賀地方の昔ばなし)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「滋賀県のお話」 |
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