昔、琵琶湖にほど近い郷里(ごうり)の庄、堀部の山すその寺に源哲という和尚がやってきた。さっそく村の人たちは挨拶するため寺にやってきたが、屋根の上で酒を飲んでいる和尚さんを見つけ、あきれて声もかけずに帰って行った。
ところでその夜、月にさそわれて横山の子狸たちも、人間の子供に化けて寺にやってきた。面白そうな和尚さんに声をかけ、和尚さんから読み書きを教えてもらう事になった。やがて、七尾山の子狸も仲間入りし、村の子供たちも親に内緒で習いに来るようになった。
ある日のこと、手習いのお礼にと、村の子どもたちは近くの川で獲った魚を和尚さんに差し出した。横山と七尾山の子狸たちも何かお礼をしようと話し合い、雨の日に和尚さんの代わりに酒を買いに行くようになった。
ところが、酒屋の主人が雨の日にだけやって来る子供たちを怪しいと思い、ある雨の夜、こっそりと子供たちのあとをつけた。寺に入ったところで子供たちにしっぽがある事に気が付き、持っていた傘で思いっきり子供たちを殴りつけた。子狸たちは正体を現し、泣きながら山に逃げ帰り二度と姿を現さなかった。
和尚さんは、子狸たちにかわいそうな事をしたと涙し、村の子供たちは狸たちを懐かしんで歌い始めた。「あーめがしょぼしょぼ降る晩に~♪ 豆狸(まめだ)が徳利持って酒買いに~~♪ 源哲さんに飲まそと酒買いに~~♪」
(紅子 2011-9-19 5:05)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 滋賀県長浜市 |
DVD情報 | DVD-BOX第3集(DVD第15巻) |
場所について | 屯覚寺(利覚寺) |
本の情報 | 国際情報社BOX絵本パート2-第101巻(発刊日:1980年かも)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第42巻(絵本発刊日:1985年11月15日)/講談社テレビ名作えほん第066巻(発刊日:1986年12月) |
絵本の解説 | この話にでてくる和尚さんは、源哲という名で、実際の人物だといわれています。現に、滋賀県長浜市堀部には、源哲屋敷と称される屋敷跡があります。これは、その源哲さんにまつわる話なのでしょう。村人たちは、風変わりな和尚さんのことを、頭がおかしいのではないかといって、付き合おうとはしませんでしたが、狭い常識にとらわれないたぬきや子ども達には、和尚さんの純粋で優しい心がよく見えたにちがいありません。和尚さんを喜ばせようと酒を買いに行く小ダヌキたち。そのいじらしい心に和尚さんの人柄がうかがわれます。(滋賀地方の昔ばなし)(講談社のデラックス版絵本より) |
講談社の300より | 書籍によると「滋賀県のお話」 |
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