ある農家にお爺さんとお婆さん、そして馬が一頭いた。この馬を狙って泥棒が忍び込み、梁の上に隠れた。同じ時に、狼も馬を狙って家に入り込んだ。
お婆さんは幼い子どもを寝かしつけようと話をしている。子どもが泥棒より狼より怖いものは何?と訪ねるので、お婆さんはふるやのもりだと答える。ふるやのもりとは古い家の雨漏りのことだが、そのことを知らない狼も泥棒もびっくりする。
やがて雨が降ってきて、天井から雨漏りしてきた。お婆さんが「ふるやのもりが来た」というと、泥棒は驚いて梁から狼の上に落ちる。狼はふるやのもりが自分の上に落ちてきたと勘違い、また泥棒も狼をふるやのもりと勘違いする。
狼は山中を走り回り、泥棒は木の枝を見つけて飛び移った。ちょうどその木に穴が開いていたので、しばらくそこに隠れることにした。ところが、穴が深かったため泥棒は穴の底に落ちてしまった。一方狼は仲間の動物たちに恐ろしい目に遭ったことを話すと、そんなおそろしいやつがこの辺をうろつかれてはたまらんと、泥棒が飛び移った木を確かめにやってきた。
木に開いた穴が怪しいので、猿が長いしっぽを垂らすと、中にいた泥棒は木の蔓と間違えてよじ登ろうとした。驚いた猿は、捕まったらふるやのもりに食べられてしまうと思い、必死に踏ん張ったら、しっぽが切れて、前のめりに倒れ、顔をすりむいてしまった。
それ以来、猿のしっぽは短く、顔も赤いという。
(稿: 蔵人 本掲載日2012-8-14 5:34 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
DVD情報 | DVD-BOX第9集(DVD第41巻) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第4巻-第017話(発刊日:1976年7月20日)/童音社BOX絵本_第28巻(発刊日不明:1970~1980年頃)/国際情報社BOX絵本パート1-第014巻(発刊日:1980年かも)/二見書房まんが日本昔ばなし第7巻-第27話(発刊日:2006年2月21日)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第09巻(絵本発刊日:1984年10月15日)/講談社テレビ名作えほん第009巻(発刊日:1977年9月) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説によると「岩手地方の昔ばなし」 |
童音社の絵本より | 絵本巻頭の解説(民話研究家 萩坂昇)によると「東北地方の昔ばなし」 |
国際情報社の絵本より | この話は、「ソバのくきは、なぜ赤い?」の話と同様、「サルの顔は、なぜ赤い?サルのしっぽは、なぜ短いか?」の”なぞとき話”です。インド・中国・朝鮮などにもこの話は分布しており、日本でも各地に、同じような話が伝わっています。もっとも、ここに出てくる動物たちは、お国柄によって、さまざまです。なかなか寝付かない孫に、お爺さん、お婆さんが寝物語をしてやるという生活様式は、核家族の現代では遠くなってしまいましたが、心から心への分化の伝達様式は、今、新たに見直されるべきでしょう。”より強い話”は、『ネズミの嫁入り』などでもおなじみです。(岩手地方の昔ばなし) |
講談社のデラックス版絵本より | 「ふるやのもり」は、「なぜそうなったか話」の一つで、「猿のしっぽはなぜ短い」という題で語られている土地もあります。孫が寝ながらおじいさんに、「この世で一番こわいものはなあに?」と聞くと、おじいさんは、「それはふるやのもりじゃ。」と答えます。“ふるやのもり”とは古い家の雨漏りのこと。それを怖い生き物と勘違いしたどろぼうとオオカミはびっくりぎょうてん、ドタバタと一幕演じたあげく、猿の顔はなぜ赤い、しっぽはなぜ短いというところにもっていくストーリー展開に、思わず笑いがこみあげてきます。(岩手地方の昔ばなし) |
講談社の300より | 書籍には地名の明記はない |
レコードの解説より | LPレコードの解説によると「岩手地方の昔ばなし」 |
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