金沢の町はずれ、小坂の伝燈寺(でんとうじ)という寺に、活道和尚(かつどうおしょう)という坊さまがいました。
ある吹雪の夜、じいさまが小さな孫を連れて逃げ込んできました。孫がオオカミに襲われて怪我をした、このままではオオカミに血の匂いをかぎつけられて狙われてしまう、と言う。じいさまと孫は、寺のコマ犬様が守ってくれるという言い伝えを信じ、ここへ逃げ込んだという。
和尚様は言い伝えにしかすぎないと思っていたが、ひとまず孫を預かってじいさまを家に帰した。その夜、血の匂いを嗅ぎ付けたオオカミの群れが神社をぐるりと取り囲んでいた。そして先頭の叫び声を合図に、オオカミの群れはすさまじい唸り声をあげ、神社に向かって襲い掛かってきた。
和尚様は小さな孫と一緒にお経を唱えはじめた。もはやこれまでかと覚悟を決めた時、小さな孫が「こまいぬさま~~~!」と叫んだ。その時、狛犬に積もっていた雪が崩れ落ち、狛犬が獅子のごとくオオカミの群れに飛び込み、次々に噛み殺していった。
やがて夜明けが訪れ、和尚様が恐る恐る外に出てみると、そこにはおびただしい数のオオカミの死骸が散らばっていた。そして、口を血で真っ赤に染めた狛犬が朝陽に照らされていた。
この狛犬は、今も金沢の三河神社に祀られているという話だ。
(投稿者: てぃっぴい 投稿日時 2012-6-9 18:31 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 清酒時男(未来社刊)より |
出典詳細 | 加賀・能登の民話 第一集(日本の民話21),清酒時男,未来社,1959年08月31日,原題「不思議なコマ犬」,河北郡誌より |
場所について | 三河神社(狛犬のいる神社) |
このお話の評価 | 9.45 (投票数 29) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧