村でも評判の、意地っぱりの老夫婦がいた。
田んぼで仕事をしていても「雨が降る降らない」で意地を張り合い、家に帰れば「風呂が沸いた沸いてない」で意地を張り合う。いつも口げんかをしていたが、村人たちはそれを微笑ましく見ていた。
ある年の秋祭りの際、豊年万作の祝い餅が配られた。最後の一つを取り合いとなりどちらも譲らないため、先にしゃべった方が負けで、勝った方が最後の餅を食べるという事にした。
その時、家に泥棒が入り、おもわず「泥棒ー!」とじいさんが叫んでしまった。泥棒はあわてて逃げだしたが、村人たちに取り押さえられてしまった。泥棒は「あんな意地っぱりで、よくあれで夫婦でいられるもんだな」と不思議がったが、村人たちは「あれでこの村では一番の仲良し夫婦なんだ」と言いあった。
結局、最後の餅はばあさんのものとなり、その後も仲良く意地を張り合いながら暮らした。
(紅子 2011-6-21 1:42)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 土屋北彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 大分の民話 第二集(日本の民話59),土屋北彦,未来社,1976年05月15日,原題「意地の餅」,採録地「大分郡庄内町」,話者「工藤秀夫」 |
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