昔、天草の近海には、多くの種類の魚が住んでいました。その中でもオコゼとヒラメは、いつも海底にじいっとへばりついていますが、以前はこうではなかったのです。
オコゼとヒラメは仲の良い若者同士でした。オコゼは、頭が馬鹿に大きく口は横に広がって、いかにも醜い顔でした。こんなオコゼが、魚の中でも美しいボラという魚に惚れてしまいました。
オコゼは自分の容姿がみにくい事を恥ずかしがって、とても告白することなどできませんでした。でも友達のヒラメが「やってみないとわからない、当たってくだけろだ」と、一生懸命オコゼを励ましました。
後押しされたオコゼは、ボラのところへ行きました。ちょうどボラは風呂からあがったばかりで、涼んでいるところでした。オコゼは勇気を出して「ボラさん、ワシは生まれつき醜いが心はキレイだ。どうか嫁になってくれ」と必死に頼みました。
ボラは突然の事で驚いたうえに、醜い顔のオコゼに告白されてもう泣きたい気持ちでした。必死に追いすがるオコゼから逃げるように、海面を飛び跳ねながら行ってしまいました。オコゼは「ワシの腹の中はきれいだ。腹わたを喰ってくれー」と叫びました。
恋に破れたオコゼは海底に沈んで過ごすようになり、ヒラメも哀れに思ってそれにつき合うようなりました。オコゼの腹わたが美味しいのは、こういう事たあったからだそうです。
(紅子 2012-8-1 0:33)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 浜名志松(未来社刊)より |
出典詳細 | 天草の民話(日本の民話47),浜名志松,未来社,1970年03月20日,原題「オコゼの片思い」,採録地「御所浦島南」,話者「黒田豊吉」 |
場所について | 熊本県天草の近海(地図は適当) |
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