昔、兵庫県三田(さんだ)の桑原のあたりに、水が豊かで米もたくさん収穫できる村があった。
この空の上には雷様たちがいて、年に一度、にぎやかな嫁取り競争を行うのだった。嫁を取る資格を得るためには、大太鼓を大きく鳴らす事ができ、肉付きの良い人間のヘソを取ってくる事、そのヘソの数が多い事、この三つの条件をクリアしないといけなかった。
若い鬼たちは嫁取り競争に勝ち残るため、みな精いっぱい大太鼓を打ち鳴らしたが、その中でも赤鬼のピカ吉が一番上手に大太鼓を叩いてみせた。ピカ吉は、今年の嫁取り競争に勝てる手ごたえを感じながら、次の条件である「大きなヘソ」を取るため、雲の上から人間たちのヘソを物色した。
すると、大きなデベソを出して昼寝している寺の和尚さんを発見し、我先にヘソを取ろうと仲間と競り合っているうちに誤って雲から転落してしまった。落ちたところは寺の井戸で、ものすごい雷の音に集まってきた村人たちによって井戸の中に閉じ込められてしまった。
井戸の中から必死に助けを乞うピカ吉を可哀そうに思った和尚さんは、二度と桑原には雷を落とさない事を約束させて井戸から出してあげた。それから今でも雷が落ちそうになると「クワバラ、クワバラ」と言えば、落ちてこないそうだ。
(紅子 2011-11-18 19:58)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 宮崎修二朗(未来社刊)より |
出典詳細 | 兵庫の民話(日本の民話25),宮崎修二朗、徳山静子,未来社,1960年01月31日,原題「くわばらの起り」,採録地「三田市」,有馬郡誌より |
場所について | 欣勝寺(きんじょうじ)雷が落ちた寺 |
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