昔、ある村に茂十(しげじゅう)というお百姓がいました。
ある夜、茂十さんが一匹の塩鮭をぶら下げて家路を急いでいると、息子に化けた狸に騙されて、まんまと鮭を盗まれてしまいました。怒った茂十さんは、翌日に罠を仕掛け、見事イタズラ狸の捕獲に成功しました。
捕まえた狸を縛り上げ、意気揚々と仲良しの喜助(きすけ)さんの家へ行き、「一緒にタヌキ汁でも食おう」と誘いました。しかし、喜助さんは心の優しい人だったので「狸が可哀そうだよ」と言って、狸をいくらかの銭で買い取り、縄をほどいて逃がしてあげました。
ところで、喜助さんの土地はものすごい荒れ地で、田んぼにするため毎日一生懸命に耕していました。ある朝の事、喜助さんがいつものように裏の荒れ地にやって来ると、すでに立派な田んぼが出来上がっていました。
不思議に思った喜助さんは、その晩こっそり荒れ地の様子を見張っていました。すると、三匹の子狸を連れたあの狸がクワを持って現れ、みんなで掛け声をかけて荒れ地を耕し始めました。「やっこら どっこい うんこらしょ、やぶも 根っこも 掘りおこせ、秋にゃ豊年満作だ~」
唄を歌いながら荒れ地を耕す狸たちを見て、喜助さんは手を合わせて感謝しました。村人たちはこの田んぼを「たぬき田」と呼び、毎年秋になると、沢山のお米が収穫出来ましたとさ。
(紅子 2012-10-20 1:05)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | おのちゅうこう(未来社刊)より |
出典詳細 | 上州の民話 第一集(日本の民話20),小野忠孝,未来社,1959年06月30日,原題「たぬき田」,採録地「邑楽郡」 |
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