昔、ある所に、一本道が通った広い原っぱがあって、そこにはいたずら好きな狐が住んでいました。
ある時は石に化けて、旅人のおにぎりをだまし取ったり、ある晩は、酔っ払って歩く若者を火の玉で驚かして、手土産の折り詰を奪ったりしました。だんだんひどくなる狐のいたずらに、村人たちも大変困ってしまいました。
そこへ、偶然に通りかかった旅の山伏が「わしの法力で狐を退治してあげましょう」と言い出しました。山伏は夜になるのを待って、狐の出る原っぱへやってきました。すると道の途中には、いつもはない大木がありました。
山伏は、大木の前で火を焚きながら、声高らかに「足止めの法」という密法を唱えました。この法力をかけられると、人間でも動物でもピクリとも動けなくなるのです。密法を唱え終わった山伏は、そのまま帰っていきました。
翌朝、再び山伏が大木のところへ行ってみると、一匹の古狐がちょっとも動けずに硬直していました。山伏が「もう二度と悪さをしないと誓えるか?」と尋ねると、狐はぽつりと涙を流しました。
山伏が足止めの法を解いてやると、古狐は涙を流しながら、山奥へ逃げていきました。それはらは、もう二度と人間を騙すことは無かったそうです。
(紅子 2013-9-20 18:47)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | おのちゅうこう(未来社刊)より |
出典詳細 | 上州の民話 第一集(日本の民話20),小野忠孝,未来社,1959年06月30日,原題「動けなくなった狐」,採録地「山田郡」,話者「中沢豊三郎」 |
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