昔ある所に、大変いたずらもののがわっぱ(カッパ)たちが住んでいる川がありました。
このいたずらカッパたちは、近くに住む庄屋の家の女中「お竹どん」だけには、頭が上がりませんでした。それにはこんな理由があります。
二~三年前の事、庄屋がカッパたちの川で釣りをしていました。カッパたちは、庄屋が釣り上げた魚を盗むイタズラをしていると、一匹のカッパが庄屋につかまってしまいました。
庄屋はすばやくカッパの頭の皿から水をかき出して、カッパの力を封じました。そして、懲らしめのために、炎天下の中、荒縄で縛りつけておきました。
次第に弱っていくカッパを見て、お竹どんは「水は命のおおもと、それを絶ってしまうとは思い上がりが過ぎるのではないか」と思いました。
でも、女中のお竹どんが、勝手にカッパに水を与えるわけにはいきません。そこでお竹どんは、全く水を使わず料理したり、米は水なしで炊いたり、使用人たちに水を与えず、馬にも全く水を与えませんでした。
のどが渇いて暴れる馬をみた庄屋は、慌てて「水じゃ、水、水を持って来い!」とお竹どんに声をかけました。お竹どんは、水がいっぱい入った桶を手にして、庭にいる馬や使用人に水をぶっかけました。
そしてお竹どんは、どさくさに紛れて縛られていたカッパにも水をかけました。頭の皿に水が入ったカッパは力を取り戻し、縄を引きちぎって川へ逃げて行きました。
庄屋は「お竹の奴、わざとやったな!もう家から出ていけ!」と激怒しました。が、庄屋も働き者のお竹どんが出ていかれては困るし、お竹どんも行くあてもないし、その後もお竹どんは庄屋の家で働き続けました。
(紅子 2013-11-7 0:56)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 熊本のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 熊本のむかし話(各県のむかし話),熊本県小学校教育研究会国語部会,日本標準,1973年12月20日,原題「がわっぱとお竹どん」 |
備考 | 舞台は荒尾市平井の井出川との事。 |
場所について | 熊本県荒尾市上井手(地図は適当) |
このお話の評価 | 8.50 (投票数 2) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧