父母が語る日本の民話 上巻(鎌倉書房,1978年4月20日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。
トーロコ(塘路湖)の岸辺に、アイヌのコタン(村)がありました。このコタンは、美しい湖から採れる魚と豊富な山の幸で豊かでした。
ある年の事、雨が何日も降り続いて、湖で魚を捕ることもできず木の実も取りに行けない日々が続きました。やがて、村で蓄えていた食べ物が残り僅かとなりました。
村の若者たちは、年取った酋長(しゅうちょう)に詰め寄り、「アッケシ(厚岸)やハマナカ(浜中)のコタンに戦いを仕掛けて、食べ物を奪い取ろう」と、言いました。
しかし酋長は、「アイヌ同士で戦うのはいけない。カムイ(神さま)に祈った事がみんな無駄になる」と言い、若者たちを戒めました。
しかし、この食料不足をどうする事もできず、酋長は一人思い悩んでいました。意気地なしの自分を嘆き、トーロコに身を沈めて自殺しようかと考えていると、一匹の大きな熊がトーロコに入水していくところを目撃しました。
酋長は、熊を呼び止めようとしましたが、ついに熊はトーロコに完全に沈んでしまいました。すると不思議な事に、あれだけ降りしきっていた大雨がぴたりと止み、空はカラリと晴れ渡りました。
次の朝、コタンの人々はトーロコ一面に薄紅色の花を咲かせたたくさんのペカンベ(ヒシ※水草)が浮いているのを見つけました。ペカンベはやがて大きな実をつけ、コタンの人たちは船を出して大切にその実を採りました。
ペカンベは毎年、コタンの人たちが食べきれない程にたくさんの実をつけました。酋長は、きっとカムイ(神)が熊の姿で現れてコタンを助けれくれたに違いない、と思いました。
(紅子 2014/4/19 2:54)
ナレーション | 未見のため不明 |
出典 | 父母が語る日本の民話(上巻,鎌倉書房)かもしれない、北海道の伝説(角川書店)かもしれない、 |
出典詳細 | 父母が語る日本の民話 上巻,鎌倉書房,1978年4月20日,原題「トーロコのペカンベ」,再話「和田義雄」,採録地「北海道釧路地方」 |
場所について | 塘路湖(とうろこ、トーロコ) |
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