昔、千葉県の長柄にくらという働き者で気立てのいい娘がいて、村人たちからも可愛がられていました。くらが16~17才の時に相次いで両親をなくしてしまい、それを心配した村人たちが隣村から良い婿を世話してくれました。
働き者の夫婦は仲良く暮らし、やがて可愛い男の子が産まれましたが、間の悪い事に婿は急死してしまいました。これにはさすがのくらもずいぶん気落ちしましたが、子供がまだ小さいので気を取り直して畑仕事に精を出しました。百姓仕事でも一番忙しい田植えの時期には、くらは小さな赤ん坊を背負って働きました。
村人たちも「手伝ってやるからいつでも声をかけてくれ」と言うのですが、くらは遠慮して一人で頑張っていました。そのうち田の草取りの時期になり、くらは赤ん坊を背負って朝から晩まで田んぼをはい回っていましたが、どうにも重労働でした。そこで、くらは背から赤ん坊を下ろし、田のあぜに子供を寝かせておく事にしました。
田の草取りに精を出していると、突然赤ん坊が大声で泣き出し、はっと見上げたくらの目の前で、大きなワシが赤ん坊をつかんで飛び立っていきました。くらは、必死になって大ワシを走って追いかけました。「くらっ子けえせ、くらっ子けえせ」と泣き叫び続けながら追いかけるうちに、くらの足のももひきが片方ちぎれ白い足を出しながら走り続けました。
やがて崖の上まで走って来たくらは、いつの間にか一匹の鳥になっていました。今でも上総の空を「くらっこー、くらっこー」と鳴きながら飛んでいる、モズよりちょっと大きく片方の足が白い「くらっ子鳥」とが飛びまわっています。
(紅子 2012-2-4 14:47)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 千葉のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 千葉のむかし話(各県のむかし話),千葉のむかし話編集委員会,日本標準,1973年12月01日,原題「くらっ子鳥」,文「高徳恭充」 |
備考 | 長柄(ながら)に住むくらという娘。くらっこ鳥は、カッコウの事だと思う。 |
場所について | 上総の国の長柄村(地図は適当) |
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