昔、信濃のある山の東と西のふもとに、小さな村がありました。この二つの村は、ちょっとした争いもがもとで、もう五十年もの長い間、行き来がありませんでした。
ある日の事、ひょんな事から「東の村と西の村とでトンチ合戦をやったら面白い」という話が持ち上がり、さっそく山の頂上で対決する事になりました。東の村からはトンチに富んだ賢く可愛らしいあさこという女の子、西の村からもトンチ娘のゆうこという女の子が、それぞれの代表として一人で山へ向かいました。
それぞれの村から道なき道を進み、ようやく山の頂上へたどり着くと、二人の顔形がそっくりで誕生日まで同じという事がわかりました。あさことゆうこはすぐに仲良くなって、自分たちの力で二つの村が仲良くできるようにと、よい考えを思いつきました。
それは、「それぞれの村から山の頂上へ向けて道を作り、一日でも早く作り上げた方が勝ち」というものでした。村人たちは、もう一生懸命に道づくりに励み、あさことゆうこは同時に道が完成するように気を配りました。やがて、予定通りにそれぞれの道が同時に完成し、山の頂上で東の村人と西の村人が出会う事となりました。
すると、東の村の長老と西の村の長老は子供の頃に一緒に遊んだ顔見知りで、昔の事を思い出したとたんすっかり仲良しになりました。もう東も西もなく一つになった村人たちを見ながら、あさことゆうこは嬉しそうにほほ笑みあいました。
(紅子 2012-1-23 23:50)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | (表記なし) |
DVD情報 | DVD-BOX第6集(DVD第26巻) |
場所について | 下高井郡山ノ内町菅に伝わる民話か? |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第30巻-第146話(発刊日:1979年6月5日)/国際情報社BOX絵本パート2-第068巻(発刊日:1980年かも)/二見書房まんが日本昔ばなし第11巻-第43話(発刊日:2006年6月20日)/講談社デラックス版まんが日本昔ばなし第28巻(絵本発刊日:1985年04月15日)/講談社テレビ名作えほん第036巻(発刊日:1981年1月) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
講談社のデラックス版絵本より | ほとんどが山という、信州らしいお話です。山の東のふもとの村と西のふもとの村は、ちょっとしたいさかいから、長いこと行き来が途絶えていました。山へ行く道もあれたまま。ところがある時、とんち合戦をすることになりました。村を代表してきたのは、どちらもかわいい女の子。二人はとんちをきかせ、東と西から山への道を作らせます。そして、両方の村人たちが頂上で顔を合わせてみれば、お互い昔の遊び仲間。村の長老もなつかしい子ども時代を思い出し、二つの村は仲直りする事が出来たのでした。子どもの心を取り戻す時、人は素直な気持ちになれるものなのでしょう。(長野地方のお話) |
講談社の300より | 書籍によると「長野県のお話」 |
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