昔、ある村の大きなお屋敷の台所での話です。とっぷりと夜も更け、台所の野菜たちもみんな静かに眠っていました。
やがて壁の穴からネズミが出てきて、ザルの中の里芋を一つ蹴っ飛ばしました。すると下にあった豆腐にぶつかり、里芋とケンカになってしまいました。あまりのうるささに大根やらゴボウやらも起きてきて、ますます騒がしくなってしまいました。
とうとう、台所の奥にいた醤油樽(たる)も目を覚ましました。「やかましいなあ」と言いながら、醤油樽がゴロンゴロンと大きな音を立てて転がるので、野菜たちは「お前の方がうるさい!あっちへ行け」と口を揃えて抗議しました。
それに怒った醤油樽が、「じゃあオラは明日は働かない!明日の煮物の味が悪くなってもオラ知らんぞ!」と言って元の場所へ帰って行きました。これはシマッタ、と思った野菜たちは、慌てて元の場所に戻って行きました。
こうして野菜たちの騒ぎは静かになって、夜はしんしんと更けていきました。
(紅子 2011-11-22 1:15)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 石崎直義(未来社刊)より |
出典詳細 | 越中の民話 第一集(日本の民話35),伊藤曙覧、石崎直義、佐伯安一,未来社,1963年09月20日,原題「里芋と豆腐のけんかに醤油」,採録地「富山市」,話者「大窪マスミ」 |
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