昔、沖縄県の糸満というところに、マンクーという名前の漁師の爺さんが住んでいた。マンクー爺さんにはジラーという名前の息子がいたが、漁に出たまま戻ってこなかった。
ある日のこと、怪我をした1羽の千鳥を見つけた。マンクー爺さんが傷の手当てをしてやると、数日で千鳥の傷はすっかり良くなった。千鳥とマンクー爺さんは、一緒に暮らすことにり、息子が帰ってこないことの寂しさが少しまぎれるような気がした。
ある日のこと、マンクー爺さんが漁から帰ってくると、洗濯や食事の用意がされていた。この不思議なことは次の日もその次の日も続き、ある時、マンクー爺さんは漁に出たふりをしてこっそり家に戻ってみた。
すると、年の頃は17~18歳くらいの娘が家から出てきた。この娘は千鳥だった。千鳥の娘は、「自分が千鳥であることは誰にも言わない」事を条件に、マンクー爺さんと一緒に暮らすことになった。
やがて千鳥の娘の噂は、村中に広がった。村人たちはマンクー爺さんに娘のことを聞き出そうとするが、爺さんは決して何も話さなかった。
ある年の夏の夜、隣村に住む徳介というマンクー爺さんの古くからの友達が、酒をもってやって来た。マンクー爺さんは、その時少し酔っていたため、娘が千鳥であることを徳介に話してしまった。
正体がばれた千鳥の娘は、家から走り去って行った。マンクー爺さんは慌てて後を追ったが、もう娘の姿はなく、空には1羽の千鳥がさびしそうに鳴いているだけであった。
「誰を恨んで泣くのか浜千鳥、会えない寂しさを私もともに」という歌詞の沖縄民謡「浜千鳥節」には、このような言い伝えがある。
(投稿者: カケス 投稿日時 2013-9-14 20:29)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 伊波南哲(未来社刊)より |
出典詳細 | 沖縄の民話(日本の民話11),伊波南哲,未来社,1958年08月15日,原題「千鳥の歌」,採集者「豊川苗」 |
場所について | 沖縄の糸満 |
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