庄川のほとり、須磨の里に徳平という若者と母親が住んでいた。
ある日、よもぎ川のほとりで、立派なマスを釣り上げた子供たちと出会った。そのマスがあまりにも美しかったので、徳平は草履を売ったお金の全額を払って、マスを買い上げた。そして、マスが生きている間に、よもぎ川に放してやった。
それから二、三日したある日の事。洗濯していた母親が川に流されてしまった所を、美しい娘が助けてくれた。その娘は、両親を亡くして身寄りがないという事だったので、そのまま徳平の嫁にした。二人は楽しい毎日を過ごしていたが、一年たったある夜の事、徳平の夢の中に嫁が出てきて、実は自分はあの時のマスで、もう帰らないといけないと言う。
翌朝、目を覚ました徳平は、娘がいなくなっている事に気が付いた。雨の中をあちこち探したが、娘の姿はどこにもなかった。徳平が庄川のほとりに来た時、娘が編んだ縄でその周辺の荒れ地一帯が囲ってあった。やがて大雨で増水した川が豊かな土を運んできて、その周辺は立派な田んぼになった。徳平はこの土地を耕し、後々、千石田長者と言われるようになった。
(紅子 2011-7-16 0:29)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松谷みよ子(講談社刊)より |
場所について | 庄川(地図は適当) |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第30巻-第148話(発刊日:1979年6月5日) |
サラ文庫の絵本より | このおはなしは、「鶴の恩がえし」や「浦島太郎」を連想させます。人間に命を助けられた動物が、そのお礼に恩がえしをするおはなしは、昔ばなしにたくさんあります。その多くの場合、美しい女のすがたとなってあらわれ、救ってくれた男の嫁になって、しばらくは人間の世界で暮らすのです。けれども、やがて人間の世界から去っていき、そのときにさまざまなかたちで恩をかえしていくのです。さてこのおはなしの舞台となる庄川は、白山山系に源を発する白川をひきつぎ、富山平野を流れて、やがて日本海(富山湾)へそそぎこみます。この庄川の一帯は、今はチューリップの栽培で有名です。(かっこ枠なし) |
このお話の評価 | 9.00 (投票数 2) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧