No.0202
うしおにぶち
牛鬼淵
高ヒット
放送回:0125-A  放送日:1978年03月11日(昭和53年03月11日)
演出:小林三男  文芸:沖島勲  美術:下道一範  作画:矢沢則夫
三重県 ) 188444hit
鬼刃を怖がる顔が牛で体が鬼という化け物の話

昔、伊勢の山奥に牛鬼淵と呼ばれる深い淵があり、そこには顔が牛で体が鬼という恐ろしい化け物が住んでいると言われていました。この山奥に、二人の木こりが山がけして木を切り出していました。

ある夜の事、いつものように囲炉裏端で年寄りの木こりがノコギリの手入れをしていると、妙な男が戸口のむしろをめくり顔を出しました。「何しとるんじゃ?」と尋ねる男に、年寄りの木こりが「ノコギリの手入れをしている」と答えました。木を切るためのノコギリと知ると、妙な男は小屋の中へ入ってくる素振りを見せました。

そこで年寄りの木こりが「じゃがの、最後の32枚目の刃は鬼刃(おにば)といって鬼が出てきたら挽き殺すんじゃよ」と言うと、妙な男はどこかへ行ってしまいました。翌晩も、同じ男がやってきて同じ質問をして帰っていきました。

翌朝、木こり達が大木を切っていると、固い節の部分に鬼歯が当たりボッキリと折れてしまいました。折れた刃を修理するため、仕方なくふもとの村まで下りる事にしましたが、若い木こりは面倒くさがって一人で小屋で待つ事にしました。

その夜、また妙な男がやってきて同じ質問をしましたが、若い木こりは酒も入ってたせいか「鬼刃の修理に行っているんじゃ」と答えてしまいました。すると妙な男は「今夜は鬼刃は無いんじゃな」そう言いながら、小屋の中へヌーッと入ってきました。

次の日、ノコギリの修理を終えた年寄りの木こりが山に戻り、牛鬼淵のそばを通りかかると、若い木こりの着物がプカプカと浮いていました。牛鬼は確かにいるのです、月の明るい晩には「ウォーン、ウォーン」と悲しげに鳴くそうです。

(紅子 2012-2-10 0:40)


参考URL(1)
http://genge-do.at.webry.info/200608/article_7.html
ナレーション常田富士男
出典松谷みよ子(講談社刊)より
出典詳細日本の伝説1(松谷みよ子のむかしむかし06),松谷みよ子,講談社,1973年11月20日,原題「牛鬼淵」,採録地「三重県」
備考採録地は転載された本(日本の民話07,松谷みよ子,角川書店,1973年4年20日)で確認
場所について三重県多気郡大台町大杉(伊勢の山奥の牛鬼淵)
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地図:三重県多気郡大台町大杉(伊勢の山奥の牛鬼淵)
追加情報
本の情報サラ文庫まんが日本昔ばなし第25巻-第124話(発刊日:1978年10月30日)
サラ文庫の絵本より絵本巻頭の解説には地名の明記はない
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※掲載情報は 2012/2/10 0:40 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
10件表示 (全26件)
ゲスト  投稿日時 2016/11/28 4:13
見方を変えると牛鬼を轢き殺せる鬼刃ってすごい
牛鬼淵  投稿日時 2016/2/14 18:53
三重のむかしばなし 牛鬼退治 ―多気郡宮川村―
https://www.kankomie.or.jp/mMukashi/detail/puzzle/ushioni.html
ゲスト  投稿日時 2015/11/6 15:57
大杉谷村(おおすぎたにむら[1])は三重県多気郡にあった村。現在の大台町の西端、宮川の最上流域にあたる。
山岳 : 白倉山、古ヶ丸山、江股ノ頭、池木屋山、国見山、小森山、仙千代ヶ峰、大河内山、堂倉山、大台ヶ原山、三津河落山
河川 : 宮川
渓谷 : 大杉谷
歴史
1889年(明治22年)4月1日 - 町村制の施行により、岩井村・檜原村・久豆村・大杉村の区域をもって発足。
1959年(昭和34年)1月10日 - 宮川村と合併し、改めて宮川村が発足。同日大杉谷村廃止。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%9D%89%E8%B0%B7%E6%9D%91_(%E4%B8%89%E9%87%8D%E7%9C%8C)
ゲスト  投稿日時 2015/11/6 15:48
鉄砲「喜五兵衛」
 宮川村には喜五兵衛(きごべえ)という鉄砲(てっぽう)の名人がおってな、こんな話が残っておるんや。
 むかしむかしのことやけどな、大杉の父ヶ谷(ちちがたに)に、「牛鬼淵(うしおにぶち)」という、滝(たき)があって真っ青で深い、不気味な淵(ふち)があったそうな。
 この近くに小屋を作って山仕事をしておる者らがおったのやけど、ときどき「ざぶーん」と何やら大きいもんが淵に飛び込(こ)むような音がするのやて。不思議な音やったけど、怖(こわ)て誰(だれ)も見に行く気にはなれへんだ。
 ある時、おそるおそる見に行って見ると、そこにおったのは頭は鬼(おに)のようで体は牛みたいな気味の悪い化け物やった。これを見たみなはびっくりぎょうてん、山小屋へ逃(に)げ帰ったんや。
「こんなとこにおったら、どないなことになるかわからへん」
と、大あわてで荷物をまとめて村へ逃げかえったんやけど、そこに居合わせたのが鉄砲名人の喜五兵衛や。話を聞いた喜五兵衛は、
「そんな化け物がおるんなら、わしが射止(いと)めたるわい」
と、案内の衆(しゅう)を連れて山へ登っていったそうな。
 淵の近くへ付いて、まだかまだか、と待っておるうちに、「ざぶーん」と水音がしたかと思うと牛鬼が不気味な姿(すがた)を現したんや。喜五兵衛は二発、三発と鉄砲を撃(う)った。そやけど妙(みょう)なことに効(き)き目があらへん。そのうちに牛鬼は、どこへやら姿を消してしもた。
 喜五兵衛らは山小屋に泊(と)まり込んで牛鬼を待つことにした。数日たって、石垣(いしがき)に隠(かく)れて見ておると、また、あの大きな水音がして牛鬼が現れたんや。それ、とばかりに鉄砲を何発撃ってもいっこうに効き目があらへん。皆(みな)が固唾(かたず)をのんで見守る前で、喜五兵衛は、
「ままよ」
と、肌身(はだ)はなさず持っておった「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と刻(きざ)んだ弾(たま)をズドーンと撃った。すると、見る見るうちに淵が真っ赤な血の海になってな、牛鬼の姿は見えんなってしもたんやて。
 もうひとつなあ、それから、鉄砲名人喜五兵衛には、こんな話もあるんや。
 大杉の高瀬というとこに大きい淵があったんや。ある日、喜五兵衛が近くを通りかかると、高瀬(たかせ)の淵の向こう岸からこっちまである大蛇(だいじゃ)が、ぬうーっと出てきたんやて。
「瀬(せ)の両岸にとどくとは、なんという大きさや。こりゃ大変じゃ」
と、さすがの喜五兵衛もあわてふためいて蛇(へび)の頭めがけて何発も撃ったんやが、いっこうに弱らへん。こまった喜五兵衛は、鉄鍋(てつなべ)の底についていた爪(つめ)を取って持っておったのを鉄砲に込めてズドンと撃った。
 すると、大蛇もたまらず川を真っ赤に染(そ)めて川下へと流れていってしもたんやて。
 ほっと一息ついた喜五兵衛が、石に腰(こし)かけて一服しておると、目の前にどこやらからか真っ白な鹿(しか)が現れて言うたんや。
「わたしは、神様の使いである。これ以上殺生(せっしょう)をしてはならん。鉄砲はもう置くがよい」
 こう、言い残すとどこへともなく消えてしもた。
「もったいない、神様のお告げや」
と喜五兵衛はふっつりと猟(りょう)をやめてしもたんやが、鉄砲名人といわれたほどの男やもん、たちまちのうちに生きがいをなくして、あの世へと旅だってしもた。
 喜五兵衛は「ふるこの川原」に葬られて、村人が墓を守っておったんやけど、ある時狼(おおかみ)が現れて墓石を倒(たお)してしもたんや。これを見た村人は
「喜五兵衛さんよ、鉄砲名人で怖(こわ)いもんなしやったあんたも、死んでしまうとみじめやな」
と、言うて、お参りをして帰ってしもた。
 それから数日後のこと。村人が墓参りに行くと、狼が墓の穴(あな)に引き込まれて死んでおる。
「やっぱり、喜五兵衛さんや。死んでもえらいもんや。魂(たましい)が生きておる」
と村人は感心してな、喜五兵衛の名前を語り継(つ)いできたんや。
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/minwa/chusei/miyagawa/index.htm
ゲスト  投稿日時 2015/11/6 15:34
話の中にあった「牛鬼に影を舐められると~」の別伝

西牟婁郡すさみ町──大字宮城に「牛鬼滝」という滝がある。昔、吉平さんという親父さんが魚を釣って居ると、この滝壷の真中に大きな牛が現われ吉平さんの影を食ってしまった。すると吉ひらさんの体は真黒焦になって死んでしまったそうである。それで今でもその滝では魚をとらないという。
みずうみ書房『日本伝説大系9』より引用

角川書店『日本の伝説39 紀州の伝説』にも同所の話があり(「琴の滝」となっているが)、村人は影を食べられないように、正月になると牛鬼が大好きな酒を携えて滝に行くのだそうな。いずれにしても牛鬼が「影取の怪」である点がまことに興味深い。
http://www.hunterslog.net/dragonology/ryujatan/kinki/miyakawa/01.html
とらねこ隊長  投稿日時 2015/11/5 21:36
これこれ。
思い出したよ。
小学生の時みたよ。
しばらく恐怖だったよ。
絵や声がうすきわるかった。
「なにしとる?」と
人間にばけた化け物が 声をかけるシーンは焼き付いてたよ。
こわこわこわこわ
夕立雲が顔出した  投稿日時 2015/10/26 14:38
『すると、そのノコギリには鬼刃はないんじゃな…?!』

そう言って、若い樵に近付く牛鬼おじさんの恐怖といったら…!

そういえばまん昔は山水のSEが良いですよね、見ている時だけでもその当時の状況に浸れるから。

しかし、Googleマップを見るに大分山奥なんですね。
ゲスト  投稿日時 2015/9/13 19:11
こわい話NO1です。職場の同僚と話しをしていて記憶がよみがえりました。おっさんがのぞくシーン、エンディングの静かな淵は言葉では言い表せません。
伊勢人  投稿日時 2015/5/26 23:49
兄弟で震えながら見てましたね。終わってホッとしてたら「これうちの近くの話だね」と父に言われてドヒャー! その夜は怖くて両親と一緒に寝た記憶。

地図の場所から宮川貯水池をはさんで反対側は、鮎の美味しい店がいくつかあるので、シーズンには食べに行ったりしますけど、その度にこの話を思い出しますね。今となっては懐かしい。

ゲスト  投稿日時 2015/4/1 23:33
日本むかし話の中でも、1番怖くていまだに思い出す話です。静かなトーンで「なにしとるんじゃ?」とのぞくところからの、鬼歯がないとわかった時に部屋の中に入ってくる時のBGMの盛り上がりが一層恐怖心を煽られました。父の背中に隠れながら観ました、ました。
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