東京の石神井川(しゃくじいがわ)に、今も下頭橋(げとうばし)という橋が架かっています。昔、この橋は江戸と川越を結ぶただ一つの木の橋として、とても人通りの多い橋でした。
この橋の周囲には大勢の乞食がたむろしていましたが、町の人々も乞食たちも仲良くおだやかに暮らしていました。この中に「六さん」という古株の年寄り乞食がいましたが、朝から晩までせっせと物乞いし、全く無駄遣いをしなかったので「けちんぼ六さん」と呼ばれていました。
ある日、六さんは一人ひっそりと死んでしまいました。乞食仲間や町の人々が、六さんをねんごろに葬ってあげて住んでいた小屋を片づけていると、床下から小銭のたくさん入った壺が出てきました。実は六さんは、若い頃に洪水で家族を流されたつらい過去があるので、この橋を石の橋に架け替えようとしていたのです。
町の人々もこの意志を継ぎ、みんなで寄付をして、この橋を立派な石の橋に架け替えました。そして、道行く人にいつも頭を下げていた六さんにちなんで「下頭橋」と名づけました。
(紅子 2011-10-25 1:03)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 東京のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 東京のむかし話(各県のむかし話),東京むかし話の会,日本標準,1975年09月25日,原題「けちんぼ六さん」,再話「千川あゆ子、来栖良夫」 |
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場所について | 下頭橋(げとうばし) |
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