昔、奈良の大仏様にお参りに来てお金を使い果たし、家に帰れない人が沢山いました。その中に岩手南部からきた爺さんと、同じく南部からトンビにさらわれてやって来たネズミのチュー太が出会いました。
里に帰りたい同郷の二人は相談して「爺さんはチュー太を運んで、チュー太は宿代を稼ぐ」という計画で、二人は一緒に南部に帰ることにしました。悪い事とは思いながら、夜になるとチュー太は泊まった宿の客の財布から少しだけお金を抜き取りました。
あと二~三日で南部に到着するという日の事でした。チュー太が客の荷をあさっていた時に、不運にも立て掛けてあった刀が倒れてきました。刃の下敷きになって瀕死の状態で戻ってきたチュー太を見た爺さんは、その夜のうちに南部に向かって走り出しました。
やっと南部にたどり着き、チュー太の母親にすでに冷たくなったチュー太を渡しました。母親はチュー太を抱きしめ、爺さんに何度もお礼を言いました。そして、欲しい物が何でも出てくるという宝物の赤い襦袢(じゅばん)をお礼にくれました。爺さんはチュー太の死を悲しみながら、南部の自分の里へと帰って行きました。
(紅子 2011-11-22 0:56)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 水澤謙一(未来社刊)より |
出典詳細 | 越後の民話 第一集(日本の民話03),水澤謙一,未来社,1957年10月10日,原題「鼠と爺さ」,採録地「岩船郡朝日村字釜杭」,話者「阿部操」 |
場所について | 岩手の南部(地図は適当) |
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