ある夜、檀家さんからの帰り道、和尚さんがお稲荷さんの近くを通りかかると、鳥居の奥から何やらガヤガヤと声が聞こえてきた。不思議に思った和尚さんが鳥居の中をのぞくと、猫たちが祠(ほこら)の中でお芝居をしていて、それをみる沢山の見物人(猫)で賑わっていた。
猫の役者たちは「忠臣蔵」の内匠頭(たくみのかみ)の有名な切腹シーンを演じている最中だったが、なかなか内蔵之助(くらのすけ)役の猫がステージに登場しなかった。しばらくすると、大慌てで衣装も着けず内蔵之助が登場したが、なんとそれは和尚のお寺で飼っている白猫のタマだった。
舞台の上で「なぜ遅れた~」と芝居がかって尋ねられたタマは、「飯が熱くてフゥフゥして食っていたので遅くなった~」と見事に返した。芝居はなんだか変な具合になったが、見物猫たちは大盛り上がりだった。
和尚さんはタマの見事な芝居に感心しつつ、お寺に帰った。翌朝、目のさめた和尚さんは縁側でまだ寝ているタマに、そぉっと声をかけた。「タマや、昨夜の芝居は大したものだった」と言った和尚の顔を、驚いて見つめ返したタマは、少し悲しそうな顔をした。
その日を境に、タマはぷっつりと姿を消してしまった。和尚さんはタマに話した事を後悔して、それからは誰にも猫の芝居のことは話さなかった。
(紅子※サラ文庫の絵本より 2011-9-17 18:30)
ナレーション | 未見のため不明 |
出典 | クレジット不明 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第26巻-第126話(発刊日:1978年11月24日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
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