昔、土佐の山奥の二淀川のほとりに、成山という小さな村がありました。その村に、養甫尼(ようほに)という一人の尼さんが住んでいました。
もともと養甫尼は、立派な殿様の奥方だったのですが、戦に敗れて殿様も死んでしまったため、この世を憂いて尼になったのでした。養甫尼の所に、甥の三郎左(さぶろうざ)も住みつくようになり、二人で静かに暮らしていました。
ある日、養甫尼が山で薪を集めていると、傷ついた武士が倒れていました。養甫尼が手厚く介抱してあげると、その男は元気を取り戻しました。武士は、伊予の国の新之丞(しんのじょう)という男で、山に生えている楮(こうぞ)の木から紙を作る方法を知っていました。養甫尼と三郎左はさっそく紙すき小屋を作り、夢中になって紙を作りました。
やがて春になり、養甫尼は桜の花を入れた紙を作ってみました。それは見事な仕上がりで、季節の草花を染めあげていつしか「七色紙」といわれ、幕府に献上する「土佐の特産品」としての貴重な物となりました。殿様から紙の役人として任命された三郎左は大喜びでした。
ところが、突然に新之丞が国へ帰りたいと言い出しました。もし、新之丞がここを出て行ったら「七色紙の秘法」がよそへ漏れてしまうと心配した三郎左は、見送りの途中で「坂ノ峠」まで来たところで新之丞を刀で切り殺してしまいました。
その後、養甫尼や三郎左がどうなったかわかりませんが、土佐の成山は今も紙すきの里と呼ばれています。
(紅子 2011-10-8 22:51)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
出典詳細 | 権力の残酷(日本の民話 第10巻),清水真弓,角川書店,1973年6年25日,原題「紙すく里」※かもしれない |
場所について | 成山和紙の里公園 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第26巻-第130話(発刊日:1978年11月24日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説によると「四国地方の昔ばなし」 |
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