昔、村はずれの鍛冶屋の権助さんの家に、猫のニャン五郎と犬のワン吉が住んでいた。
ある日、権助さんは自分の作った道具をかついで街に売りに行くことになった。権助さんは、くれぐれも居眠りしないでちゃんと留守番をするようにニャン五郎とワン吉に言いつけ、家を出て行った。
権助さんが出かけると、ニャン五郎は昼飯を食べようとワン吉に言い、魚を持ってきた。「こりゃまずい。ご主人様の夕飯のおかずだよ」と、ワン吉が言うのも聞かず「食ってしまえばそれまでよ」と言ってニャン五郎は魚を食べてしまった。そして、ワン吉には頭としっぽしか残さないのだった。
昼飯を食べたら眠たくなってきたので、ニャン五郎はご主人様の言いつけも構わず、縁側で昼寝を始めた。これを見ていたワン吉、しばらくして自分も眠くなってきたので、今度は自分が寝る番だとニャン五郎に言う。
するとニャン五郎は、隣で昼寝されると自分も眠たくなるので庭で寝ろと言うのだ。仕方なくワン吉は、ござを敷いて庭で寝ることにした。
ワン吉が寝ている間、なんとか目を覚ましていようとするニャン五郎だが、次第にウツラウツラし出し、とうとう我慢できずに縁側で眠ってしまった。
さて、そうしている間に、家には留守を狙った空き巣が忍び込んだ。ところが二匹とも眠りこけていたので空き巣が入ったことに気が付かず、空き巣はこれをいいことに、家財道具一式を盗んでいってしまった。
ニャン五郎は、ご主人の権助さんが帰る頃にハッと目を覚ました。家の中を見渡せば、家財道具など目ぼしいものは全部盗まれている。慌てたニャン五郎は、徳利を頭にぶつけて傷を作り、腕に包帯を巻いて囲炉裏の灰の中にもぐった。そして権助さんが帰ってくると、自分はこの通り泥棒と闘ったが、ワン吉は泥棒など構わず外で昼寝をしていたと言って、空き巣に入られた責任をワン吉一人に負わせてしまったのだ。
怒った権助さんは、それ以降ワン吉が家の中に上がるのを許さず、ワン吉は庭で食事をとることになった。
こんな訳で、今に至るまで猫は座敷で食事をし、犬は外で食事をしているのだそうだ。
(投稿者:やっさん 投稿日時 2014/12/1 14:00)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 鹿児島県 |
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