昔、熊本の八代の麓(ふもと)に、彦市というトンチ男といたずら好きのメスの銀ぎつねがいました。
銀ぎつねは、どうにか彦市を困らせてやろうとあれこれいたずらをするのですが、逆に彦市に騙されてひどい目にあっていました。
ある時、銀ぎつねが彦市にいたずらしようと、たくさんの梅の実をぶつけました。ところが彦市は「梅に当たるとは、うまい事に当たるって意味で、めでたいめでたい」と、お礼の鮎(あゆ)まで置いて帰っていきました。
人間に梅をぶつければ鮎をもらえる、と思った銀ぎつねは、通りかかった侍に梅の実をぶつけて怒らせてしまい、いたい目にあいました。
ある日の事、球磨川(くまがわ)で鮎釣りをしている彦市に、見かけない侍が話しかけてきました。彦市は「銀ぎつねが化けた侍」とわかっていたので、「これはこれは水泳の先生!この間約束した通り素晴らしい川泳ぎを披露してください」と、言い出しました。
銀ぎつねが化けた侍は、彦市に促されるまま、沢山の石を背負って球磨川へ入っていきました。しかし、川底の石に足を取られそのまま深みにはまって溺れ、あやうく死にかけました。
銀ぎつねは「彦市にはかなわない」と、少しだけおとなしくなりました。でも、それからも彦市と銀ぎつねの騙し合いは続いたそうです。
(紅子 2013-10-18 23:11)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 熊本のむかし話(日本標準刊)より |
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