ある所に、たいへん仲良しのお爺さんと孫の男の子がいました。二人は早く春が来て畑に蕎麦を植えて、美味しいそばがきを食べたいと思っていました。
その年の春はカンカン照りで、二人は心配しながらも畑を耕して蕎麦の種をまきました。男の子は無事に種まきが済んだので「もうこれでそばがきが食べられるね!」と喜びましたが、お爺さんは「いいや芽が出るまではまだまだわからん」と言って喜びません。
それから、蕎麦からは芽が出て花が咲き実がなり、無事に収穫することができました。やっと念願のそばがきを作ってお椀によそい、さぁ食べようとした時に男の子が「今度こそそばがきが食べられるよね!」と言いました。でも、お爺さんは「いいや、口に入るまではまだまだわからん」と笑い返しました。
お爺さんがそばがきの茶碗を手にした時、近くにいた猫に手を出されてしまい、囲炉裏(いろり)の灰の中にお爺さんのそばがきが落ちてしまいました。物事は最後まで”まだまだわからん”という事ですね。
(紅子 2011-11-30 4:08)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第一集(日本の民話29),松岡利夫,未来社,1960年09月14日,原題「まぁだまだわからん」,採録地「熊毛郡」,話者「後藤柳助、斎藤長三、井川シズ」 |
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