昔、沖縄の八重山に、ミストゥンナーとカジマッターレと言う鳥の姉妹が住んでおりました。
姉のミストゥンナーは気立てのよい働き者で、妹のカジマッターレは我が儘で見栄っ張りでした。ふたりの姉妹は仲良く父母に孝行しておりましたが、やがて成長して、それぞれ他家に嫁いで行きました。
ある日、ミストゥンナーのところにトビウオが使いにやってきて「お前の父と母が病に倒れた。早く見舞いに行ってやりなさい」と言いました。驚いたミストゥンナーは妹のカジマッターレを訪ね、一刻も早く父と母を見舞いに行こうと言いましたが、カジマッターレは「私は美しいスギナカカン(晴れ着)を仕立ててから帰るから、姉さんは先に帰って」と行って帰ろうとしませんでした。仕方なしに、ミストゥンナーはひとりで里帰りしました。
途中、雨風に晒され、泥まみれのみすぼらしい姿になりながらもミストゥンナーはやっとの事で家に帰り、父母の看病をしましたが、看病の甲斐も無く父母は呆気なく死んでしまいました。
弔いを済ませ、墓の前でさめざめと泣くミストゥンナーの前に、白黒の見事な布で仕立てられたスギナカカンを身にまとったカジマッターレがやって来ましたが、ミストゥンナーは無邪気にスギナカカンを見せびらかすカジマッターレに「私が至らないばかりに、お前にとうさんとかあさんの死に目にあわす事が出来なかった」と泣いて詫びるのでした。
この出来事を知った神様は、ある時二人の姉妹を呼びよせ、おごそかに告げました。「ミストゥンナーは身なりこそみすぼらしいが、自分の身も顧みず父母の看病をし、大変親孝行だから、褒美として立派な家に住み、あらゆる穀物を好きなだけ食べて良い。カジマッターレは姿は立派だが、晴れ着を作る為に親の死に目にも会えなかった不孝者だから、罰として雨に降られ風に吹かれ、わずかな虫けらだけで飢えを充たすが良い」
それ以来、ミストゥンナーの一族は人間が住む瓦屋根の家に巣をつくり、穀物を好きなだけ食べて暮らしていますが、カジマッターレの一族は雨風に晒され、わずかな虫けらを食べて、みじめに暮らしているのです。
沖縄では、ミストゥンナーはスズメの事、カジマッターレはツバメの事を言うのです。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2013-8-17 13:32)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 沖縄のむかし話(日本標準刊)より |
出典詳細 | 沖縄のむかし話(各県のむかし話),沖教組沖縄のむかし話編集委員会,日本標準,1979年06月25日,原題「ミシトゥンナーとガジマッターレ」,再話「野田タキ子」,ばがー島 八重山の民話 |
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