昔、石川の熊木というところに清作というたいそう臆病な男がおった。
清作は夜に一人で便所にも行けんほどであり、昼は昼で野良仕事中に出てくるヘビやモグラなどにも腰を抜かすほどであった。そのために田畑を耕すのも人の倍以上かかり生活は苦しくなる一方であった。
ある夜のこと。清作の夢枕に二の谷の神様が現れた。今すぐに一人で、二の谷の「かっと石」のところまで来いと言うのである。しかし臆病な清作にそんなことができるはずもなかった。
しかし次の日も二の谷の神様は現れた。清作が「かっと石とはどのような石なのか」と神様に聞いてみると、「来ればわかる」とだけ答えて神様は消えた。その日、清作はまさかりを持って出発し、二の谷のせせらぎが聞こえるところに奇妙な形をした大きな石を見つけた。
清作が近づいてみると、その石は大きくかっと口を開き、そこから黄金のにわとりが出てきた。「これは神様が下さったご褒美に違いない」と思った清作は、まさかりを持って黄金のにわとりに近づいて行った。
しかし黄金のにわとりは「コケッコー、まさかりはダメよ」と言いながら、再び「かっと石」の中へと消えて行った。口を閉じてしまった「かっと石」を見て清作はまさかりで「かっと石」を割って、黄金のにわとりを取り出そうと考えた。
その時、「かっと石」から強い光が出てまさかりが燃えてしまった。あたりは真っ暗となり、清作は気を失ってしまった。清作があまりにも臆病なので、神様が清作の臆病を治そうとしてくださったのだが、清作がまさかりに頼りすぎていたので、神様はお怒りになったのかもしれない。
その後清作は黄金のにわとりが忘れられず、いつかまた「かっと石」のところへ行こうと思い、夜の便所も一人で行くようになり、臆病の虫を追い出そうと努力したということである。
また石川県の熊木にある「かっと石」は、今も人々に大事にされているということである。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/3/1 20:04)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 清酒時男(未来社刊)より |
出典詳細 | 加賀・能登の民話 第一集(日本の民話21),清酒時男,未来社,1959年08月31日,原題「不思議な石 その三」,鹿島郡誌より |
場所について | 熊木のカット石(大きさ約2m) |
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