昔、沖に鬼ケ島をのぞむ海辺のある村に、五分一(ごぶいち)どんという男がいた。
この五分一どん、その名の通り身長が普通の人の五分の一ほどしかなかったので、いつも村の衆から小男、小男と言われ馬鹿にされていた。それで悔しい思いをしていた五分一どん、いつか村の衆を見返してやろうと思っていた。
そんなある日、村の衆が集まり酒盛りをしていた。この席で五分一どんは、鬼ケ島には打出の小槌という宝があり、これさえあれば何でも望みがかなうという話を小耳にはさむ。そこで五分一どん、その打出の小槌を自分が持って帰って来て、皆をあっと言わせてやろうと決心。
五分一どんは早速恐ろしい鬼ケ島へと向かう。鬼ケ島に着くと、人間の匂いを嗅ぎつけた鬼どもが、すぐに近くに寄ってきた。恐ろしかった五分一どんだったが、機転を利かせて四つん這いになり、妙な声で鳴いてみせた。すると鬼どもは、小さな五分一どんを見てこれを人間とは思わず、珍しい生き物だと思い床の間に置いた。
こうしてまんまと鬼どもの屋敷に入った五分一どんは、打出の小槌を手に取ると、一目散に逃げ出した。ところがこれに気づいた鬼どもが後から追いかけてくる。そこで五分一どんは打出の小槌を振り、自分の体を怪力を持つ大男に変えて、追ってくる鬼どもをコテンパンにやっつけてしまった。
五分一どんは意気揚々と村に帰り、村人に打出の小槌を見せた。すると、村人は小槌から大判小判を出してくれと五分一どんにせがみ、ついには出てきた小判をめぐって取り合いをする始末。この醜態を見た五分一どん、こんな物を人間が持っていてはロクな事にならないと考え、打出の小槌を大黒様に預けることにした。
そこで五分一どんが大黒様の社の前でこれまでの経緯を話すと、社の中から大黒様が現れた。大黒様は五分一どんの誠意を褒め、七福神の一人になるように言う。こうして五分一どんは福の神の仲間入りをして、その名も布袋様と名付けられたということだ。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-5-29 7:43)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 下野敏見(未来社刊)より |
出典詳細 | 種子島の民話 第二集(日本の民話34),下野敏見,未来社,1962年11月25日,原題「ほていさん」,採録地「西之表市上石寺」,話者「遠藤友二」 |
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