昔ある寺に「さんちん」という小坊主と和尚さんが住んでいた。このさんちん、大変ないたずら者でその上食いしん坊だった。
ある日さんちんが本堂の掃除をしていると、本尊のお不動様にお供えした饅頭が無くなっていた。さんちんは和尚さんに知らせたが和尚さんはよく探せと言うだけだった。その後も度々お供物が無くなるので、和尚さんは食いしん坊のさんちんが盗んでいるのだろうと疑い、今度お供物を盗んだら寺を出て行けと怒った。
ある日、檀家の村人からぼたもちをもらいお不動様にお供えしたが、さんちんはまたお供物を盗まれて寺を追い出されるのでは心配で、ほうきを持って本堂にこもった。
そして夜中、さんちんがうとうとしていると、ガタリと音がした。さんちんが音のする方を見てみると、床板がわずかにはずれ、その下から大きな犬がはい出てきた。犬はさんちんの足に噛み付いたところで、突然お不動様の目が光り、お不動様が手に持っていた剣が降り降ろされた。
翌朝和尚さんが本堂へ行ってみると、そこにはさんちんが血を流して倒れていた。和尚さんは驚いてさんちんを起こしてみると、夕べ化け物が現れたと言う。そして本堂には化け物のような大きな犬が死んでいた。そしてお不動様の剣には赤い血がついていた。お供物を盗んでいたのはこの犬だった。
お供物の盗み食いくらいはお不動様も大目に見ていたが、さんちんを襲ったのでお許しにはならなかったのだ。こうしてさんちんの身の証は立てられた。それ以後、このお不動様は「犬切り不動」と呼ばれたそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 栃木県 |
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場所について | 犬切不動尊(崇真寺) |
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