昔、天の橋立の近くに、旅人たちを騙すけれど、どこか愛嬌のある白狐がいました。この白狐は、きれいな若い女に化けるので「橋立小女郎」と呼ばれていました。
ある秋の日、江尻村の太平と源十という二人の漁師が、魚と野菜を積んだ小舟で、宮津の港へやってきました。すると、いつの間にか小舟に乗り込んでいた小女郎が、売り物である上等な鯛を食べてしまっていました。
怒った源十が、小女郎を縄でぐるぐる巻きにして、船底に押し込みました。しかし、小女郎が「縄がきつくて痛い」と悲しそうに訴えるので、縄をほどいて小女郎を魚籠の中に押し込みました。そして、小女郎が逃げ出さないように、魚籠を縄でぐるぐる巻きに縛っておきました。
ところが、源十がどんなに小舟を漕いでも、次の港には到着しませんでした。とうとう日が暮れてしまい、仕方なく橋立のまん中ほどの陸へあがりました。源十は「こうなったのもすべて小女郎のせいだ」と、魚籠から小女郎を引っ張り出して、燃え盛る火の中に投げ込みました。
またたく間に小女郎はまっ黒に焦げてしまいました。源十は「村のみんなに見せてやろう」と、焦げた小女郎をふたたび魚籠に入れて持って帰りました。源十の話を聞いて集まってきた村人たちの前に、源十が魚籠の中身をぶちまけると、中からはまっ黒に焦げた大根がでてきました。
小女郎は火の中に投げ込まれる前に、大根とすり替わっていました。こんなことがあってからは、源十は「大根の豪傑」と変なあだ名をつけられるようになりました。
(紅子 2013-10-12 23:49)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 二反長半(未来社刊)より |
出典詳細 | 京都の民話(日本の民話41),二反長半,未来社,1965年10月10日,原題「橋立小女郎の話」,原話「白岩貞吉」 |
場所について | 天の橋立(地図は適当) |
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