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No.0130
ばんじときりのはな
磐司と桐の花

放送回:0079-B  放送日:1977年04月09日(昭和52年04月09日)
演出:杉井ギサブロー  文芸:杉井ギサブロー  美術:杉井ギサブロー  作画:杉井ギサブロー
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あらすじ

昔、陸中(りくちゅう)のマタギに万治(まんじ)と磐司(ばんじ)という若者がいた。万治は名うての猟師で、山へ入れば必ず獲物を取ってきたが、一方の磐司はと言うと、山へ入っても鹿一匹取れない日さえあった。

ある日のこと、万治が山へ入ると、一人の女が苦しそうにしていた。女の人は産気づいており、一杯の水を万治に求めた。ところがこれを聞いた万治は、お産の穢れとは死人の穢れより悪いと言い、女を助けずに山を下りてしまう。

しばらくすると、磐司も山に入ってきた。磐司は苦しそうな女の人を見ると、急いで水を汲みに谷に下りた。ところが磐司が水を汲んでいる間に、なんと十二人の赤ん坊が産まれていたのだ。

女は磐司が汲んできた水を飲むと、自分はこの山の神であると言い、助けてもらったお礼に磐司に山の幸を約束した。一方、苦しんでいる者を助けない万治には、もう山の幸はやれないと言った。それからというもの、磐司が山に入れば必ず獲物を取って帰り、一方の万治は、さっぱり獲物が取れなくなってしまった。

ある時のこと、磐司は早池峰山(はやちねさん)に小屋がけしていた。すると夜中に、ズーン、ズーンと地響きのような足音が小屋に近づいてくる。この足音の正体は、一本足に一つ目の“やまんじぃ”という大きな化け物だった。

やまんじぃは磐司に言う。この山に自分より強い百本足のやまんじぃが攻め込もうとしている。そこで磐司の腕を見込んで、自分に加勢してほしいと。磐司はやまんじぃが可哀想に思え、この頼みを引き受けた。

さて次の日の夜、とうとうやまんじぃたちの戦いが始まった。磐司が百本足のやまんじぃに向けて矢を放つと、矢は見事にその一つ目を射抜いた。早池峰山のやまんじぃは、涙を流して喜び、お礼に磐司を山の奥の洞穴に案内した。

そこからは川の水が流れ出し、洞穴の中は薄紫色の桐の花が咲く一面の桐林だったという。磐司はこの洞穴を“磐司ケ洞(ほら)”と名付けた。磐司の死後、猿ケ石川(さるがいしかわ)に流れる桐の花を見て、村の者が川を遡って磐司ケ洞を見つけようとしたが、不思議なことに誰一人として磐司ケ洞にたどり着いた者はないのだという。

(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-6-4 16:21)


ナレーション市原悦子
出典松谷みよ子(講談社刊)より
出典詳細日本のむかし話1(松谷みよ子のむかしむかし01),松谷みよ子,講談社,1973年11月20日,原題「磐司ときりの花」,採録地「岩手県」
備考採録地は転載された本(日本の伝説上巻,松谷みよ子,講談社,1975年5月15日)で確認
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※掲載情報は 2012/6/4 16:20 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
8件表示 (全8件)
Perenna  投稿日時 2020/12/21 1:26
猟師の磐司伝説というのは、もともとは岩手県の民話ではなくて、山形県の立石寺に因むものだったらしいです。
明治41年に出版された「山寺名勝志」という本に、磐司にゆかりのある遺跡について書かれています。(コマ番号52/80)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/763541/52

「磐司祠
五大堂の側の巌窟を龕(がん)と爲し、磐司の像を安ず、毎年旧暦七月七日祭礼を施行す、俗に山寺の祭礼と称し・・・往昔磐司は其の弟磐三郎と共に当山に住し、獣猟を以て生計と爲し居りしが、遂に大師の教化を受け、深く仏法を信じ、渓間を奔走し、大に大師に力を添たるものなり。」

また、磐司が居を構えて猟をしていた「磐司巌」という名所もあるそうですが、こちらは現在では、隣接する宮城県仙台市太白区秋保町馬場に編入されてしまったそうです。
松谷みよ子が岩手県のどこでこの昔話を採集したのかは不明ですが、おそらく「磐司磐三郎」(または「磐司と万治」)の物語は、東北地方のあちらこちらに、手を変え品を変えて伝わっているのではないでしょうか?
早池峰山の麓にある磐司ケ洞の出てくる民話や昔話については、もう少し詳しく調べてみたいなと思っています。
アザヴ  投稿日時 2018/12/1 22:45
しかも杉井さんはこの時放浪の旅に出ていたから実質的には絵コンテだけの参加なんだよな…
ゲスト  投稿日時 2017/10/17 6:20
山の神様を怒らせて獲物がとれなくなった万治はどうしたんでしょう?
どうもずる賢い所があるようなので、商人にでもなったんでしょうか?
彼なら転んでもタダじゃ起きないから何があっても大丈夫でしょうが・・・
それでも彼のその後が全く触れられていないのが気になります。
ゲスト  投稿日時 2017/2/16 16:15

「マタギの神様」のお話ですね  

子供の頃は「ケガレ」の意味がわからず悩んだものです  

ゲスト  投稿日時 2016/8/2 22:42
岩手県の県花が桐であるというのも、関連がありそうで興味深いです。
ゲスト  投稿日時 2016/5/17 4:41
演出、脚本、美術、作画、一人でこなした杉井さんはすごいと思います。
ゲスト  投稿日時 2016/3/10 20:12
松谷みよこさんのご冥福をお祈り致します。
yassan  投稿日時 2012/6/4 16:54
後半部分が「赤城と日光の戦い」、「大じゃと大むかで」とも微妙に重なる。
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