昔ある所に、様々な骨董品、珍品を集めることを競っている庄屋と和尚がいた。
ある時、和尚が大変美しい楓(かえで)の古木を手に入れた。それは幾重にも紅葉した葉を茂らせた、実に見事な九重の楓だった。和尚がそれを庄屋に見せて自慢すると、庄屋は何とかこの楓の木をゆずってほしいと和尚に頼み込む。しかし和尚は、この楓の古木に比べれば、家屋敷など何の価値もないと言って聞き入れない。
そこで庄屋は夜中にこっそり楓を盗んでしまう。後日庄屋は楓を和尚に自慢するが、和尚は自分の楓を盗んだのだろうと怒る。しかし庄屋は似た楓だと言って白を切る。
怒った和尚は禁じられた呪の法術を使い、庄屋の馬を次々と殺す。恐れをなした庄屋が楓を元に戻すが、何回も植え替えたためか、この楓の古木は枯れてしまった。その後庄屋の家は家運が傾き、土地を切り売りしてその場をしのいでいたが、やがて没落してしまった。
そして、寺の方も自分の欲のために禁断の呪術を使ったためか、その後寂れてしまい、とうとう本堂ともども跡形もなく消えてしまったという。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岩手県 |
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