いつもごっそりと大儲けを企む、欲張りな宿屋の女房がいた。客に出す酒はお湯で薄め、食事の量は少なくし、客がおかわりを言うと高額料金を請求する、という強欲ぶりだった。
ある日この宿屋に、大金を所持した客が泊まることになった。宿屋の女房は、沢山のミョウガを客に食べさせ大金の入った財布を忘れさせようと考えた。早速、ミョウガ料理を作り始めた女房は、何度も味見をしながらミョウガの旨煮を完成させた。客に出されたこの日の料理は、ミョウガの味噌汁・ミョウガの旨煮・ミョウガのおひたし、という茗荷づくしだった。
翌朝、茗荷料理の美味しさに上機嫌で帰っていた客を見送った女房は、大急ぎで財布の忘れ物を探し始めた。部屋中くまなく探したが何も忘れ物はなく、逆に宿賃をもらう事をすっかり忘れていたことを思い出した。女房は、昨夜たくさんのミョウガを味見したため、客よりも多くの物忘れをするようになっていた。
大急ぎで客を追いかけた女房は、道行く人に客の行方を尋ねるも、正しい物の言い方を忘れてしまいさらに帰り道も忘れてしまい、ただただ途方に暮れてしまった。
(紅子 2011-10-20 19:33)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 高橋在久(未来社刊)より |
出典詳細 | 房総の民話(日本の民話26),高橋在久,未来社,1960年05月15日,原題「茗荷と女房」,採録地「長生郡」,話者「稲子文月」 |
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