昔、鳥取のある町に藤助というかわらけを売る若者がおった。
ある日のこと、細い路地から大変美しい娘が現れた。藤助はかわらけを売ることも忘れて、娘の後を追いかけた。娘はずんずん進んでいき、大きな屋敷の中に入って行った。
藤助は娘が出てくるのを屋敷の前で待った。とうとう夜になってしまったが、一人の老婆が出てきて何をしているのかと藤助に問うた。
藤助が一晩の宿を申し出ると、老婆は快く藤助を屋敷の中へ受け入れた。老婆に本当は娘を追いかけてきたのだろうと悟られ、白状する藤助であったが、娘はこの屋敷に住むものではないという。
どこの娘か、謎かけを解いてほしいと、茶碗に水を入れて、その中に糸を通した針と小石を沈められたものを見せられた。藤助は娘に会いたい一心で、「播磨の国の小石村、茶碗屋のおみずさんという娘ではないか」と謎を解いた。
翌朝、藤助は娘を探して播磨の国へと向かった。そして播磨の国の小石村に着くと、大変立派な唐津屋(瀬戸物屋)を見つけた。藤助が店の中に入っていくと、主人が現れ、藤助の知恵をほめ、娘の婿にふさわしい男だ、と言った。
しかし、娘を嫁にやるために、もう1つやってほしいことがあるという。それは夜になってから、墓場の一番新しい墓を掘り起し、埋められている死体の額にかぶりつくこと、であった。
夜になって藤助と主人は墓場へ行った。新しい墓を掘り起し、やがて白木の棺桶のふたが出てきた。ふたを開けるとそこには見るも恐ろしい死体があった。藤助は肝をつぶしたが、死ぬ気で額にかぶりついた。しかしかぶりついた瞬間、藤助の口の中に甘いものが広がった。そう、死体は砂糖で作った人形であった。
これは藤助の勇気を試すものであった。主人は藤助こそ、娘の婿にふさわしいと言った。こうして藤助とおみずはめでたく夫婦になった。藤助は仕事に精をだし、唐津屋を一層大きい店として商売を繁盛させたという。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/5/18 13:58)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 鳥取の昔ばなし(三丘社刊)より |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第03巻,川内彩友美,三丘社,1988年08月10日,原題「かわらけ売り」 |
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