ある離れ小島に住んでいる若者がいた。
その島は日当たりも悪くて作物もあまり取れず、橋もなく大変不便で、となりの本島へ渡るにも船を使わなくてはならなかった。そのため嵐などになると船が沈み、人が亡くなることも少なくなかった。若者はそんな光景を見ては何とかしたいと切に願っていた。それを聞いた島の神様が若者の夢に現れ、明日の一番鳥が鳴くまでの間、神の力を貸してやると告げた。
それを聞いた若者はすぐに海岸へ行き、大岩を持ち上げて橋を架け始めた。見る間に橋は完成に近付くが、それを見た海神は怒り狂い、大波を起こして若者に襲い掛かる。しかし若者は橋を架けるまでは負けるものかと、必死に大波に抵抗する。神の力を借りている若者には海神の力も及ばず、海神はあせった。
そこで海神は地元の漁師に化け、若者に近付きひと休みしたらどうかと話し掛けた。若者はまだ一番鳥が鳴くまでは時間があると思い、ひと休みすることにした。そして海神の化けた漁師に一番鳥が鳴くまでに橋を完成させねばならないと話した。それを聞いた海神は急いで鶏を1羽連れてきて、懐で暖め始めた。暖められた鶏は勘違いしてけたたましく鳴き声を上げた。
すると若者の力はたちまち失われ、それを見た海神は大波を起こし再び若者に襲い掛かった。若者は海へ飲み込まれ、二度と姿を見ることはなかった。
そしてそれ以来、その島には若者の涙のような雨がふり、その後には必ず離島と本島を繋ぐように虹の掛け橋がかかるようになったそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 紀州の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 紀州の伝説(日本の伝説39),神坂次郎,角川書店,1979年10年20日,原題「七色の橋」 |
場所について | 串本町鬮野川(くじのかわ)にある橋杭岩 |
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