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No.1208
とくぜんぶちのおおなまず
徳善淵の大ナマズ

放送回:0763-A  放送日:1990年08月25日(平成02年08月25日)
演出:こはなわためお  文芸:沖島勲  美術:西村邦子  作画:遊佐和重
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あらすじ

岡山の伝説(角川書店,1978年4年10日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。

むかし、久米の吉岡村に徳善というご隠居が住んでいた。家を出て坂道を下ると吉井川があり、そこが深い淵になっていたので、徳善爺は初夏ともなると釣りをして過ごした。ただ、糸を垂れてるだけで、浄瑠璃をうなってばかりいた。

ある日、いい気持ちで釣り糸を垂れていると、「おーい、ご隠居さん、でっかいのが引いてるぞぉー」という声にハッとして、釣竿を握りしめた。糸はギューンと張って、淵の中に引きずり込もうとする。「おーい、誰か」と助けを求め、声をかけた若い衆が加勢に入った。両足を踏ん張り、引きつ戻りつ、逃げ回る怪物との力比べとなった。やがて、力が尽きたか、魚を手元に引き寄せることができた。釣竿を持ち上げると五尺もある大ナマズで、暴れまわるのを抑え、ようやくビクに納めることができた。

ビクの中の大ナマズは大人しかったが、五尺もあると担ぐのも一苦労。しばらく歩かぬうちに、すぐ木の根っこに腰を下ろした。すると、どこからか、か細いが澄んだ歌声が聞こえてくる。立ち上がって辺りを見回したが、周りには誰もいず、「不思議なことじゃ」と思って、また耳を澄まして、歌声に聞き入っていると、

千年万年 あの淵に 住み慣れし このわしを
余計なことに 胴欲な 釣っていくとは…

と、聞こえる。徳善爺は度肝を抜かれ、両膝を付いてしまった。恐る恐るビクを覗くと、歌はピタリと止んだ。「ただのナマズじゃないと思ったが、淵の主じゃったか」徳善爺は冷や汗を垂らし、淵のそばまで駆け降りると、大ナマズを放した。大ナマズは淵の中へと滑り込み、後には大きな水紋が残った。「浄瑠璃をうなるんじゃあ、なぁ…」

その翌日から徳善爺はフッツリと釣りをやめてしまった。その代わり、昼と夜となく、浄瑠璃をうなる声が聞こえ、急に上手くなったと評判が立った。徳善爺の話では、耳を澄ますと、ビクの中から聞こえた澄んだ声が、浄瑠璃を教えてくれるんだとか。村人は大ナマズが逃がしてくれたお礼に教えてくれるんじゃろうと噂し、徳善爺は名人と言われるまでになった。それからというもの、大ナマズを釣った淵は徳善淵と呼ばれるようになったとさ。

 (投稿者: araya 投稿日時 2012年1月20日 6:37 )


ナレーション未見のため不明
出典クレジット不明
出典詳細岡山の伝説(水藤春夫,角川書店)かもしれない、採録地は美作の国久米の吉岡村とのこと。
場所について徳善淵は柵原総合支所から吉井川を数百メートル程下った所(地図は適当)
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地図:徳善淵は柵原総合支所から吉井川を数百メートル程下った所(地図は適当)
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※掲載情報は 2012/1/20 22:16 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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久木小学校の卒業生  投稿日時 2020/9/7 1:16
東京生まれですが、父の仕事の関係で1954年〜60年 柵原町 藤原の社宅から久木小学校に通っていました。徳善淵は毎日通った通学路です。60年以上も前になりますね。吉井川での魚採り、吊り橋、鉱山の立坑、隧道など懐かしい思い出がいっぱいです。
小学校を卒業後、東京に戻り、現在は横浜市に住んでいます。ふとした折に「日本の伝説29-岡山の伝説」を知り、急ぎ買い求めました。読み進むにつれ 幼少時代の思い出が蘇ってきて、ちょっぴり感傷的な気分になりました。

20年前に小学校の同窓会があり、40年ぶりに帰省?したのですが、毎日通った徳善淵の道幅がとても狭く感じられたことを思い出します。

良い本をありがとうございました。
yassan  投稿日時 2016/9/24 15:51
地元民様
ご報告ありがとうございました。地図を柵原総合支所から吉井川沿いに数百メートル下った地点に修正しました。
地元民  投稿日時 2016/9/23 23:48
徳善淵の場所は、美咲町柵原総合支所の前の県道を吉井川の川沿いに数百メートルほど下った先にある大きなカーブの先の一帯です。
araya  投稿日時 2012/1/19 6:59
『岡山の伝説』(水藤春夫,角川書店)所収の「徳善淵の大ナマズ」に「美作の国久米の吉岡村に」とありますので、現在の岡山県久米郡美咲町大戸下の吉岡地区のこととなります。また、主人公の徳善が大ナマズを釣ったのは川の淵ですので、吉岡地区の前を流れる吉井川の川幅からみて、支流の注ぎ口の内側が深い淀みの淵ではないかとポインティングしました。

http://g.co/maps/mwfq4 (地図は適当)
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