昔々ある山奥の小さな川に悪戯好きなエンコ(河童)が住んでいて、村人達をたいそう困らせておりました。
ある日、その村の「六衛門さん」という庄屋さんの家に「河原権左衛門(かわらごんざえもん)」と名乗るお侍がやって来ました。ところが、このお侍、どうも生臭い匂いがします。そして、自分の住んでいる河原の淵の底にピカピカ光る物が沈んで困っているので、村人達の手でこれを取り除いてほしいと六衛門さんに頼むのでした。六衛門さんは「おかしな話じゃのう。エンコは金気の物を怖がると言うし、さてはこいつ、侍に化けたエンコじゃな。」と思いましたが、悪さをしに来た訳でもなさそうなので、もう少し話を聞いてみることにしました。
一方、六衛門さんを心配した下男は慌てて村人を呼びに走りました。そうして、手に手に棒や縄を持った村人達が六衛門さんの家に集まり、あっという間にエンコのお侍をふんじばってしまいました。「やっぱりエンコじゃ!懲らしめてやらにゃあ!」「待て待て、今日のところはわしに免じて許してやってくれんかのう。」と六衛門さんが村人達をとりなし、エンコも大粒の涙を流して謝ったので、村人達はようやくエンコを許してやることにしました。
そうして村人達はエンコの頼みを聞いてやることにして、光る物が沈んでいるという淵の底に潜ってみました。すると淵に沈んでいたのは古い鍬の先で、それがピカピカ光ってエンコを怖がらせていたのでした。六衛門さんと村人達がその鍬の先を取り除いてやると、すっかり安心したエンコは何度も何度もお礼を言って川の中へと帰ってゆきました。
あくる日、エンコのお侍がまた六衛門さんのところへやって来ました。そうして、お礼の印にと「ホウの鳥の卵」を六衛門さんに渡しました。六衛門さんがその卵を食べると、どうしたことか胸がスーッとして気分がとても爽やかになりました。その上、顔の皺がみるみるうちになくなり、白髪はすっかり黒くなってしまったのでした。この話を聞いた村人達はホウの鳥の卵を皆で分け合って食べました。
そのためか、この村の者は皆長生きをしたそうです。またそれから後、エンコが村人に悪さをすることは二度となかったそうです。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2011-11-26 22:46)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 垣内稔(未来社刊)より |
出典詳細 | 安芸・備後の民話 第二集(日本の民話23),垣内稔,未来社,1959年11月30日,原題「河童のお礼」,採録地「山県郡」,話者「村上吾作、一畑電鉄観光ガイド」 |
備考 | 尻切れ |
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