昔、鎌倉街道がにぎわっていた頃、二村山の峠に「まご六」というキツネがいました。まご六は、威張りくさったサムライの髷(まげ)を上手に取ってしまう「まげとりの名人」でした。
ある日、殿様行列の先駆け(下調べ)を務めるサムライが「俺様がまご六を打ち取ってやる」と、まご六のいる峠に意気揚々とやってきました。サムライは、まご六が化けたであろう娘のいる茶店で酒など飲みながら、様子をうかがっていました。
やがて酔いがまわってきたサムライは、茶店の娘のすすめるまま風呂に入りました。サムライが、娘も風呂に入って来ないかとワクワクしながら待っていると、遠くから「下にー、下にー」と、殿様行列の声が聞こえてきました。
サムライは大慌てで風呂から飛び出し、裸のまま自分の着物と刀を探し回りました。そこへ、サムライの上役(上司)が現れて「殿の使いでありながら、裸で何をしている!成敗いたす!」と、刀で切りつけました。
サムライがハッと気が付いた時には、周囲には殿様行列はおろか茶店も無くなっていました。頭に手をやると、サムライのちょんまげは切り落とされていました。サムライは悔しがりながら、裸のまま峠を下って帰っていきました。
この後も、まご六に髷を取られるサムライは後を絶たなかったそうです。
(紅子 2013-10-18 22:16)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 小島勝彦(未来社刊)より |
出典詳細 | 尾張の民話(日本の民話66),小島勝彦,未来社,1978年05月10日,原題「峠のまご六」,採録地「豊明市」,話者「前山美恵子」,採集「小島和子」 |
場所について | 鎌倉街道の二村山の麓(地図は適当) |
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