昔、千葉の大原に貧しい百姓夫婦が住んでいた。
この夫婦はとても仲が良く、嫁は心優しく働き者だった。ところがこの家には、腰を悪くしたごうつくな姑がいて、しょっちゅう嫁に何やかやと無理なことばかりさせていた。
ある日姑は「これからは毎日、水を入れ替えて風呂をわかしてくれ」と言い付つけた。だがこの辺りは水の便が悪く、風呂に入れるだけの水を手に入れるには、山の奥の泉まで行かねばならないので大変だった。
だが嫁は姑のためにと朝早く水を汲みに行き、姑を風呂に入れてやった。風呂に入った姑は喜び、さらに「これからは朝、昼、晩、新しい水に入れ替えて沸かしてくれ」と言いつけた。その次の日から、嫁はもっと大変になったが、姑のためにと必死で水汲みをした。
そんな日が何日が続き、ある朝のこと。嫁が観音様に「おかあさんの腰が早く良くなりますように」とお願いした。するとその時、家の前に水が湧いてきた。嫁は水を見て大喜びし、早速水を汲んで風呂を沸かしてやった。
この泉の水で沸かした風呂に入った姑の身体に、異変が起こり始めた。そして姑が「何とありがたい湯じゃろう。腰の痛いのが治っていくようだ」と手を合わせた。そして風呂からあがると「おめえにさんざん無理なことをしてすまなかった」と詫びた。観音様がくださった泉は、頑な姑の心を清らかに解きほぐし、腰の痛みまで治してくれた。
それからもこの泉はこんこんと湧き続け、家の前は豊かな畑となった。そしてこの泉は「めぐみの泉」と呼ばれ、それからも清らかな水を絶やすことはなかったそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 千葉県 |
場所について | 御宿町上布施1474の真常寺?(お嫁さんが観音様に祈った場所) |
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