昔、岡山の成羽町(なりわ)ところの山奥に木ノ村(きのむら)という村がありました。
この村には、とりわけ体が大きい清三郎(せいざぶろう)という力持ちで気の荒いの男がいました。清三郎には力持ちで気の強い嫁と、可愛い一人息子がいました。毎晩、大ゲンカをするような夫婦でしたが、この息子だけは大変な可愛がりようでした。
ある日、嫁が山瓜を取って帰って来ました。働きもせず家で嫁の帰りを待っていた清三郎は、山瓜を一人で食べようと、息子を連れて崖の上に登りました。それに気が付いた嫁が、崖をよじ登って追いかけていくと、清三郎は崖上から山瓜を投げつけました。次々に山瓜を投げつけるうちに、清三郎は誤って息子を崖の上から投げつけて殺してしまいました。
息子の死を後悔しきれなかった夫婦は、国司(くにし)神社の前にひれ伏して教えを乞いました。神さまは「死んだ者は生き返らない。供養のために下の谷から大岩を二つ運んできなさい」とお告げになりました。
夫婦は言われた通り、谷の大岩を持ち上げようと必死で格闘しました。やがて頭から角が生え、手には鋭い爪が生え、口からは牙が生えて、その姿は鬼になりました。鬼になった夫婦は、泣きながら大岩を持ち上げ、神社の境内に投げ上げました。
これを見た神様は、この岩を「夫婦岩」と名付け、岩に子供の姿を彫りました。そして「鬼になった姿で村人たちを驚かせないように、この岩を自分の子どもと思って遠くから供養するように」と言いつけました。
こうして、鬼の夫婦は中国山地の奥深くに引っ込み、遠くから息子の供養をしました。
(紅子 2012-10-10 3:22)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 岡山県 |
場所について | 夫婦岩(岡山県高梁市成羽町布寄木ノ村) |
このお話の評価 | 7.60 (投票数 10) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧